自民党の「楽勝ムード」が一変
参院選は終盤戦へ突入し、10(日)の投開票日まで1週間を切った。この週末に行われた最新の世論調査では、当初マスメディアなどが言っていた自民党の「楽勝ムード」が一変している。私は先週の寄稿でも世論調査の結果などから、内閣支持、自民支持が低下傾向であると指摘したが、より厳しさを増していると言える。
衝撃的なのは、サンプル数の多い日経新聞の調査だ。現在のリードを自民が保てば、選挙区41議席、比例19議席の計60議席となるが、接戦区が非常に多くなっている。1人区32のうち、野党優勢が1、接戦が12となっており、仮にこれらを自民が全て落とした場合、選挙区35議席、比例19議席の計54議席となる。
前回2019年の参院選より3議席減らすことになり「敗北」と言われてもおかしくない議席となる。これまで与党がリードしているとみられていた福島で無所属の野党共闘候補がリードし、宮城は立民候補が、奈良は何と維新候補がリードしている。1人区で維新が勝利すれば衝撃的だ。
さらに、TBS系列の調査では、自民は比例で前回2019年の19議席に届かず、18以下となる可能性があるとしている。この調査でも1人区は接戦が増え、8選挙区で接戦、3選挙区で野党優勢となっている。これらを自民党が全て落とすと、選挙区37、比例18の55議席となる。
なお、時事通信も情勢調査を伝えており、「自民60議席超の勢い」となっているが、これは世論調査や出口調査の数字ではなく、記者の取材や読みをもとに行われているものであり、現在の世論の状況とズレがあるかもしれず参考程度の数字としたほうが良い。
岸田政権への厳しい批判と岩盤保守層の行方
全国各地を応援などで訪問するなかで多い声は何か。岸田総理は先週、G7、NATO首脳会談への参加など外遊を行った。通常は外交日程を終えると支持率は上昇することが多いが、今回は「G7良かったね」などの声は聞かれない。今回の外交日程は国民の注目を浴びず、関心も持たれなかった。
一方、電力ひっ迫への対応について、かなり厳しい意見をいただいている。先週、「電力需給ひっ迫注意報」が4日連続で出されたが、「電力が不足するなんて、日本は途上国なのか?」とのお叱りをいくつも受けた。節電ポイントも不評であり、国民は対処療法的措置ではなく根本対策を求めている。原発再稼働について街頭で訴えると、賛同者がほとんどである。
さらに、各種価格高騰対策にも手を打てていないとの声が多い。冷静に消費者物価指数の内容を見ると、著しい物価上昇とはなっていない。しかし、季節変動があるとはいえ、たまねぎの値段が倍になったり、麺やパンなど小麦加工食品も値上げとなっており、国民は物価高を強く体感している。
燃油高もそうであり、建設業や住宅メーカーにおいては資材高騰により建設コストが上昇している。先日、ある自民党をご支援いただいている団体の事務局長とお話ししたところ、「岸田政権は何も対策を打っていない」と、お怒りだった。
こうしたことにより自民支持が下落しているわけだが、そうした元々は自民に投票していた方々の投票先は今回どうなるのか。岩盤保守層、岩盤自民支持層20%のうちすでに10%が逃げていると私は分析してきたが、やはり多くが参政党に流れている。
私は参政党は比例での獲得票は最大で70万票から80万票と言ってきたが、100万票まで伸ばす可能性が出てきており、1議席獲得が視野に入っている。そして、維新の伸びも顕著である。岸田政権の改革色の打ち出しが弱いと言われるなか、20代から40代までの若手サラリーマン層や若手経営者層からの支持の声は高い。
これまで、安倍政権、菅政権の自民党の改革路線へ賛同していた方々も維新に流れている。上海電力の問題などで保守層は維新に投票しないとの見方があり、それは当たっているとみられるが、中道でこれまで自民党に投票していた方々は一定数が維新へ投票する行動を取っている。