バイデン大統領の発言は失言的発言か?
先週行われた日米首脳会談でアメリカのバイデン大統領は、台湾有事の際には直接的に軍事介入し台湾を防衛する意思を示した。これは、本来より突っ込み過ぎた失言的発言ではないかと言われているが、私はそうではないと考える。台湾危機が迫るなか、「米国は直接介入するが、日本はどうするのか?」との疑問を我々に突き付けたのだと思う。
台湾に対する軍事的統一を視野に入れている中国がいま現在、台湾侵略に至ってないのは、中国軍の渡海能力が限られるからである。しかし、航空兵力やミサイルによって、都市を壊滅する作戦は決行される可能性がある。
これらについては着実に実行できるよう準備を進めており、昨年10月に過去最多の52機の中国軍機が一斉に台湾の防空識別圏に進入した際には、戦闘機、爆撃機、早期警戒管制機、対潜哨戒機など、空からの台湾侵略を実行するために必要な航空戦力が投入された。陸上戦力の渡海能力においても、装備の充実や訓練によって年々その能力を高めている。
さらに、先週には、中国が占領下に置いているウイグルの砂漠地帯に、自衛隊の早期警戒管制機(AWACS)の模型が設置されていることが衛星写真で判明した。中国軍が攻撃演習のため設置したとみられるが、自衛隊の早期警戒管制機は静岡県の浜松基地に配備されており、中国は浜松基地へのミサイルなどでの攻撃も視野に入れていることとなる。
この早期警戒管制機は、ウクライナ防衛戦でも活躍している。首都キーウなどの制空権をロシア軍に取られなかったのは、NATOの早期警戒管制機がロシア軍戦闘機を捉え、ウクライナ側に逐次伝えていたからである。これによってウクライナは戦闘機の迎撃能力を飛躍的に高めることができた。
なぜなら早期警戒管制機は、地上レーダーよりも広い範囲を探知でき、超低空飛行で侵入したり、遠距離から攻撃したりする飛行機やミサイルも発見しやすい。台湾有事においても自衛隊の早期警戒管制機は重要な役割を果たす。これを破壊するための演習に中国はすでに着手しているわけだ。
台湾の東側、すなわち太平洋側からの攻撃
日米豪印クアッドの首脳会合が行われている最中の24日、中国軍とロシア軍の爆撃機が日本周辺の日本海や東シナ海、太平洋上空で長距離の共同飛行を行った。クアッドに対する示威行動である。
この直前、22日から23日にかけては、中国海軍のフリゲート艦2隻が東シナ海から対馬海峡を北上して日本海に入り、23日には中国海軍のミサイル駆逐艦が沖縄本島と宮古島の間を南下して太平洋に出た。爆撃機の共同飛行と連携している可能性が高い。
これら太平洋での中国の行動は十分に警戒しなくてはならない。これまでは中国が台湾を侵略する際には、大陸側から台湾海峡をまたいで作戦が展開されるとみられていたが、台湾の東側、すなわち太平洋側からの攻撃も考えていると分析できるからだ。
昨年11月には中国軍の爆撃機が空中給油機とともに台湾の防空識別圏に侵入し、台湾の南側から東側に回り込む動きを見せた。さらに、中国軍の爆撃機は繰り返し沖縄本島と宮古島の間を抜けて南下し太平洋を飛行しているし、その飛行エリアは、グアムの米軍基地を空対地ミサイルで攻撃できる地点に到達しているとの情報もある。
台湾東側からの中国による侵略を日米はどのように阻止していくのか。
自衛隊においては那覇基地から台湾方面に戦闘機を飛ばす場合、700kmという距離となり作戦形態が限られる。そこで、ステルス戦闘機F-35Bの離着陸が可能な、いずも型護衛艦が必要となるわけだ。海空を中心とする対処能力の強化が求められる。