「豊かになる前に老いる中国」の悲劇―データが示す中国経済の近未来|澁谷司

「豊かになる前に老いる中国」の悲劇―データが示す中国経済の近未来|澁谷司

全人代で李克強首相が「需要の縮小、供給網への衝撃、市場の期待の後退」という「三重の圧力にさらされている」と危機感を表明した中国経済。経済より政治が優先される習近平政権下で今何が起きているのか。確かなデータをもとに中国経済の現状と近未来を緊急分析する。


「戦狼外交」で対外的八方ふさがり

第3に、習近平政権は、海外で「戦狼外交」を展開している。台湾に対する強硬な態度もその一環かもしれない。そのため、対外的に八方ふさがりとなっている。

2010年代前半、中国共産党は、米国を中心とする国際秩序に異議を唱え始めた。おそらく、米国に代わって中国が世界の覇権を握ろうとしているのではないだろうか。特に、米国やオーストラリア等に強硬姿勢を取っている。

例えば、2021年4月、オーストラリアは「新型コロナ」発症地と見られている武漢へ“独立調査団”の派遣を要求した。その反発から、習近平政権は、豪州に対し、石炭やワイン・農産物等の禁輸措置を取った。また、中国当局は中国人観光客が当地への旅行を控えるよう指示するなど、政治と経済をリンクさせた対応を採っている。

「一帯一路」で途上国の隠れ債務が42兆円

Getty logo

他方、習近平政権が肝煎りで推し進める「一帯一路」構想は「コロナ禍」で行き詰まっている。世界貿易が円滑に行われていないので、同構想はあまり機能していないのではないか。

実は、中国の「一帯一路政策」がもたらした途上国の隠れた債務が3850億ドル(約42兆7500億円)に達する(『日経新聞』「[FT]一帯一路関連「隠れ債務」、途上国の見えざる脅威 途上国の対中国未公表債務は約43兆円、米民間調査機関が試算」2021年9月30日付)という。

一方、周知の如く、中国全土に不動産建設が行われ、すでに34億人以上も住めるマンションが建てられている(『サーチナ』「中国の『鬼城』<ゴーストタウン>50カ所以上、破たんに突き進む不動産開発=青島大教授が警鐘」<2015年12月23日付>)。

中国の不動産会社は、中国恒大以外、全体の合計で560兆円の負債を抱えているという試算(『ウォール・ストリート・ジャーナル』「恒大以外にも、中国不動産業者に560兆円負債」2021 年 10 月 11 日付)もある。

最近、3線級、4線級と言われる地方都市では、不動産が値崩れしている(拙稿「値崩れし始めた中国不動産市場」『Japan In-depth』2022年2月20日付)。その現象を(黒竜江省)「鶴崗化(かくこうか)」(鶴崗市は事実上財政破綻した)という。また、その値崩れした不動産価格は「白菜価格」と呼ばれる。

いくら中国の地方の物価は安いと言っても、中古の2LDK(約50〜60平方メートル)が100万円〜200万円程度で買うことができるという。ひょっとしたら、今後、1線級、2線級という大都市でも不動産が値崩れを起こさないとも限らないだろう。

関連する投稿


トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

「交渉のプロ」トランプの政治を“専門家”もメディアも全く理解できていない。トランプの「株価暴落」「カマラ・クラッシュ」予言が的中!狂人を装うトランプの真意とは? そして、カマラ・ハリスの本当の恐ろしさを誰も伝えていない。


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


最新の投稿


【今週のサンモニ】サンモニ名物コメンテーターの差別発言|藤原かずえ

【今週のサンモニ】サンモニ名物コメンテーターの差別発言|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「情報軽視」という日本の宿痾をどう乗り越えるのか 松本修『あるスパイの告白――情報戦士かく戦えり』(東洋出版)

【読書亡羊】「情報軽視」という日本の宿痾をどう乗り越えるのか 松本修『あるスパイの告白――情報戦士かく戦えり』(東洋出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】口だけの核廃絶は絶望的なお花畑|藤原かずえ

【今週のサンモニ】口だけの核廃絶は絶望的なお花畑|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

「石破首相は総裁選やこれまで言ってきたことを翻した」と批判する声もあるなか、本日9日に衆院が解散された。自民党は総選挙で何を訴えるべきなのか。「アベノミクス」の完成こそが経済発展への正しい道である――。


【今週のサンモニ】偽善と悪意に溢れたコメント連発|藤原かずえ

【今週のサンモニ】偽善と悪意に溢れたコメント連発|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。