「移民解禁」という愚策 茂木幹事長の危険な発想|山岡鉄秀

「移民解禁」という愚策 茂木幹事長の危険な発想|山岡鉄秀

岸田政権は本当に「大移民政策」にかじを切るのか…。茂木敏充幹事長はかつて次のように語っている。「日本を『多様性のある多民族社会』に変える」ために、「定住外国人に地方参政権を与える」。若手時代の国家ビジョンとはいえ、非常にナイーヴでかつ危険な発想だ。岸田政権が日本解体政権とならないように、国民の監視が絶対に必要である。


「2度と日本へは行きたくない」

日本に来ても学ぶことがないばかりか、下手をすると奴隷労働を強いられてしまう。ベトナムへ帰国した実習生にアンケートを取っても2割程度しか回答がなく、「2度と日本へは行きたくない」というコメントがほとんどだという。

ブラジルからの日系実習生の言葉には胸が痛む。かつてブラジルに移民し、苦労して生活基盤を作った先祖から「日本は素晴らしい国だ」と聞いて来たら、とんでもない搾取の国だったので2度と来たくない、というのである。

1月6日、読売新聞によると、外国人技能実習生を企業などへ斡旋する監理団体のうち、30団体が法令違反によって許可が取り消されたが、その半数以上にあたる18団体は、国から「優良団体」との認定を受けていたことが分かった。それらの団体は、虚偽の監査報告書の提出や名義貸しなどの不正行為をしていた。

たとえば、塗装技術を学ぶはずだったベトナム人男性(32)が実際に斡旋された実習先では、アスベスト(石綿)の除去作業を指示され、体調を崩して退職した。

男性には渡航費用の借金50万円だけが残り、「日本に来なければよかった。実習生を大事にしてほしい」と嘆いているという。

こんなことを続けていれば、日本は人権を無視して外国人労働者を搾取する国だから、中国のウイグル人問題に関しても中国を批判できずに沈黙していると思われてしまうだろう。

やるべきことは2つある

Getty logo

実質的な移民解禁という愚策に走る前に、やるべきことは2つある。

まず、機械化を進めて単純労働への依存を低減すること。そして、技能実習と言いながら、実質は低賃金労働者の導入という姑息な本音と建前の使い分けをやめることだ。単純労働者が必要なら、正直に季節労働者制度を作ればよい。

オーストラリアとトンガの間にはそのような制度があり、トンガ人が半年契約などでオーストラリアの農場に出稼ぎに来る。半年間、家族と会えない寂しさを我慢してまとまったお金を持って帰国すると、家を建て替えたり、子どもを良い学校へ行かせたりして、生活の質向上に繫げている。

最初から始まりと終わりがはっきりした季節労働者制度と割り切り、厚遇してあげれば、ウィン&ウィンの関係を築くことができるだろう。

岸田政権が日本解体政権とならないように、国民の監視が絶対に必要だ。

関連する投稿


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

我が党はなぜ大敗したのか|和田政宗

衆院選が終わった。自民党は過半数を割る大敗で191議席となった。公明党も24議席となり連立与党でも215議席、与党系無所属議員を加えても221議席で、過半数の233議席に12議席も及ばなかった――。


衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

衆院解散、総選挙での鍵は「アベノミクス」の継承|和田政宗

「石破首相は総裁選やこれまで言ってきたことを翻した」と批判する声もあるなか、本日9日に衆院が解散された。自民党は総選挙で何を訴えるべきなのか。「アベノミクス」の完成こそが経済発展への正しい道である――。


石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

石破新総裁がなぜ党員票で強かったのか|和田政宗

9月27日、自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出された。決選投票で高市早苗氏はなぜ逆転されたのか。小泉進次郎氏はなぜ党員票で「惨敗」したのか。石破新総裁〝誕生〟の舞台裏から、今後の展望までを記す。


青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

青山繁晴さんの推薦人確保、あと「もう一息」だった|和田政宗

8月23日、青山繁晴さんは総裁選に向けた記者会見を行った。最初に立候補を表明した小林鷹之さんに次ぐ2番目の表明だったが、想定外のことが起きた。NHKなど主要メディアのいくつかが、立候補表明者として青山さんを扱わなかったのである――。(サムネイルは「青山繁晴チャンネル・ぼくらの国会」より)


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。