“自撮り写真”に「くまのプーさん」
しかし、彭さんは中国当局に軟禁されているのではないかという懸念は続く。
それは、ジャーナリストによって最初に投稿された、彭さんの近況とされる写真を注視すると分かる。この写真では彭さんがパンダのぬいぐるみを抱えているのだが、その後ろには「くまのプーさん」の写真が写りこんでいる。
ちなみにパンダは、中国の公安(公安部国内安全保衛局=国保)の意味で使われることがある。パンダ→国宝=国保と、発音が同じだからである。そして、「くまのプーさん」は習近平国家主席と重ねられることから中国では投稿や検索が禁止されている。
この2つが並んでいることは、彭さんが「弾圧に屈しない」というメッセージや、「中国当局の監視下に置かれている」とのメッセージを送っていると解することができる。つまり、彭さんが依然として厳しい状況に置かれていることは明らかだ。
私はこうした状況が続けば、まず世界各国の北京冬季五輪内定選手たちが、五輪出場を取りやめると宣言し始め、その動きが広がっていくと思う。テニス界において、大坂なおみ選手や男子世界ランク1位のジョコビッチ選手がこの問題に声を上げ、ジョコビッチ選手は中国撤退も辞さないWTAへの支持を表明した。
こうした動きがスキーをはじめとするウインタースポーツの選手に波及する可能性は高い。人権が弾圧されている国で、平和の祭典であるオリンピック・パラリンピックが開催され、そこで選手として競技を行うことは考えられないとするトッププレーヤーは多いはずだ。
そして、こうした動きの広がりは、世界各国による北京五輪ボイコットにつながっていく。人権弾圧と平和の祭典は共存しえない。
「日本版マグニツキー法」を制定せよ!
こうしたなか、日本政府の姿勢があいまいであるのは忸怩たる思いだ。バイデン米大統領はすでに北京冬季五輪への「外交ボイコット」に言及しているが、岸田文雄首相は「日本は日本の立場で物事を考えたい」と述べた。
中国の人権状況が劇的に改善しないかぎり外交ボイコットは既定路線であるのに、なぜその可能性に言及できないのか。
また、林芳正外務大臣が訪中を調整していると述べたことも、中国や国際社会に対する誤ったメッセージとなる危険性があるのではないか。林外相は18日の王毅中国外相との電話会談で訪中の打診を受け、中国を訪問しての外相会談について、「調整はしていこうと」とテレビ番組で述べた。
我々が政府与党としてまずやるべきことは、国会においてウイグルの方々などに対する人権弾圧非難決議を速やかに行うことであり、人権弾圧を行った個人や当局関係者に資産凍結などの経済制裁を科す「日本版マグニツキー法」を制定することである。
G7で「マグニツキー法」がないのは日本だけだ。日本はアジア太平洋のリーダーとして、中国の人権問題に断固として向き合っていかなくてはならない。
そうでなければ、安倍政権、菅政権で築き上げた日本を中心とするクアッドなどの外交協力、防衛協力は、各国の失望により枠組みが崩壊しかねない。日本が中国に対し強い姿勢を取ることを各国は求めている。
我が国の意志としても中国の人権弾圧や覇権的行動はまったく許容できないのは当たり前のことだ。それなのに日本政府の姿勢はいまだ弱い。私は自民党内においてしっかりと声を上げ、政府が断固たる対中政策を取るよう動かしていく。