麻生太郎副総理の正論
菅政権は福島第一原発の処理水を海洋放出で処分する方針を決定した。
溶融炉心(デブリ)を冷却した汚染水から放射性物質を除去した処理水は、トリチウムだけは除去できずに含む。これを海水で国際放出基準の40分の1に薄めて放出する。
結果、WHO(世界保健機関)が定める飲料水の水質ガイドラインの7分の1、極少の濃度となる。 4月13日、中国外交部の報道官・趙立堅がコメントした。
「日本は国内外の疑念や反対を顧みず、周辺国や国際社会と十分に協議しないまま、福島第一原発の処理水を海に放出する方法で処分することを一方的に決定した。きわめて無責任だ。国際的な公共の健康や安全、周辺国の利益を大きく損なう。日本は利害関係国やIAEA(国際原子力機関)と協議しないまま勝手に処理水を海に放出すべきではない」
これを聞いて副総理・麻生太郎が記者会見で言う。 「処理水のトリチウム濃度は、中国や韓国の原発が海洋放出しているものより低い。飲んでも、どうってことはないそうだ」
対して中国外交部は反論。
「飲めるというなら飲んでみろ。太平洋は日本の下水道ではない」
麻生も負けちゃいない。 「太平洋は日本の下水道ではない? そんなら中国の下水道なのかね。みんなの海じゃないか」
麻生が言うように、どこの国の原発もトリチウムを海洋放出もしくは空中放出で処分している。だからフランスの原発関係者は、「福島は元のやり方に戻っただけで、何の問題もない」
アメリカのブリンケン国務長官も日本の処分法に支持を表明した。
反日こそ支持率回復の特効薬
お笑いは韓国の対応だ。水産組合は「断固、反対」を叫び、市民団体は「希釈するといっても海に放出される放射性物質の総量は変わらない」として、金切り声を上げる。
文在寅大統領は日本の海洋放出を阻止すべく、国際海洋裁判所に差し止めを求める仮処分の提訴を司法官僚に指示した。
ところが、昨年10月、韓国政府の作業部会がまとめた報告書がある。これには次のような記載がある。
放出された処理水が韓国海域に達しても、「海流に乗って拡散・希釈され、さしたる影響はない」
処理水に含まれるトリチウムに関しても、「水産物を摂取しても被曝の可能性はきわめて低い」
これらの記載と文在寅大統領の日本を被告とする提訴の指示とは、どうみても相反する。すなわち笑止の沙汰だ。
文在寅政権の支持率は下降の一途を辿り、目下のところ30%だ。さきごろ行われたソウルと釜山の両市長選で与党は惨敗した。
日本に対する提訴の指示は、例によって「反日こそ支持率回復の特効薬」とする固定観念から出たものと見受ける。