「中国崩壊」願望は目を曇らす
前回(下記リンク参照)取り上げたような「もうほとんど中国の言い分と一体化してしまった本」もなかなか問題だが、「中国は悪! 強大! 中華思想で拡大! しかしいずれ崩壊する!」といったトーン一辺倒の本にも、やはり弊害があると言わざるを得ない。
一時の爽快感を得られはしても、それが中国の実相に迫っているかといえば、必ずしもそうは言い難い面がある。
善悪の結論ありき、あるいは「中国は崩壊してほしい」という願望から始まるのではなく、客観的な観測を積み上げた中国分析本、しかも一般書で読みやすい書籍はないものか?
今回取り上げる中川コージ『巨大中国を動かす紅い方程式 モンスター化する9000万人党組織の世界戦略』(徳間書店)は、まさにそうした一冊として読者諸兄にお勧めしたい。
【読書亡羊】まるで中国要人の主張を読んでいるみたい 富坂聰『「反中」亡国論』 | Hanadaプラス
https://hanada-plus.jp/articles/775その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末、もとい、今回は連休書評!
反中ではなく、知中・賢中へ
「実は中国という国自体には全く興味がない」ながら、北京大学大学院で日本人初の「経営戦略学」博士号を取った著者が、専門である「組織戦略論」的視点から中国共産党という九千万人を擁する巨大組織を分析した本書。
というとなんだか難しそうだが、ちょっとクセになる独特の語り口で、わかりやすく説明してくれるため、すんなり情報が入ってくる。
そしてそのスタンスは、〈日本に様々な形で影響を及ぼす巨大なチャイナを知るために、少しでも感情論や思い込みを抑えて「知中」になっていきましょう。まずは我々日本人のひとりひとりがチャイナを理解して「正しく恐れ」「正しく競争する」ベースを作ってゆくことができたらいいな、と思っております〉 という、まさに「知中」であり、そこから「賢中」の域に達しようというものだ。
本書の情報量は多く、一般書としては異常なレベルなのだが、この語り口のおかげで、「え、そうなの」「なるほどそういうことなのか!」という、驚きと納得が得られる。