【読書亡羊】まるで中国要人の主張を読んでいるみたい 富坂聰『「反中」亡国論』

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末、もとい、今回は連休書評!


新疆ウイグル自治区内で「強制労働」または「ジェノサイド」と呼べるような実態があるのか否か。それを精査して読者に提供する能力が私にはない。

ところがそのあとに、こう続く。

一方、私以外の人間に、この真相を書く能力があるのか、と言われれば、これも間違いなく「ない」と答えざるを得ないだろう。

それがなぜなのか、真意を測りかねるが、要するに現在の日本におけるウイグル言説は西側先進国の言い分を垂れ流しているだけであり、各国の研究機関、報道局も〈何一つ明確な証拠を示せてはいない〉ことが核にあるようだ。

続けて富坂氏は、在外ウイグル人は単に切々と自身の不遇を訴えるだけでなく「政治的意図がある」のであり、実際にウイグルには独立を目論む「テロリスト」も存在している。ウイグルだけでなく、台湾や香港の背後には、欧米などの外局勢力の影響が見え隠れしている。

ましてや証拠もないうちから欧米の尻馬に乗るだけの日本の保守言論人の「口先だけの勇ましさ」は、日中の関係を悪化させ、むしろ日本国民を経済的にも苦境に陥れかねないのだ、と説く。

中国や親中派の言い分であるというならば納得だが、以前から中国分析を続けてきた拓殖大学教授であり、一時は櫻井よしこ氏が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」にも籍を置いていた富坂氏の主張となると、驚かれる向きもあるかもしれない。しかし本書は全編にわたり、ほぼこうした様相なのである。

それでも確かに中国に厳しい保守系論者・識者の視点からは得られない新鮮な切り口や重要な情報も得られるため、読む価値は大いにある。

いや、ぜひ読んだ方がいい。

かなり逆説的な言い方になるが、本書は「中国側から見ると、この世界はどう見えているのか」「中国が『戦狼外交』と呼ばれる姿勢を、他国から批判されてもまだなお続ける理由はどこにあるのか」といった、「中国側のOSで世界を再定義する」ためにはうってつけの一冊だからだ。

筆者は「中国」だと思って読むべし

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