五輪の開催は「国際公約」
では、もし朝日や野党などの主張するとおり、五輪を中止すればどうなるか。我々が「やります」と手を挙げた時、スペインのマドリードとトルコのイスタンブールも手を挙げた。三者が約1年をかけて、IOCに対して自国で開催する意味などを懸命に説得し続けたのだ。
プレゼンテーションは何も2013年9月のブエノスアイレスだけではなく、5月にロシアのサンクトペテルブルクで、7月にスイスのローザンヌなどでも行った。プレゼンテーション前日の昼食会で、スペインのスポーツ大臣が「緊張して食事が喉を通らない」とこぼしていたが、陽気さで知られるラテン系の人たちが食事が喉を通らないほどの重圧のなかで、みな必死に闘ってきた。
各国とも自国がいかに素晴らしいかを説明し議論し尽くした結果、マドリードやイスタンブールを退けて東京が招致を勝ち取ったのだ。つまり、東京五輪の開催は「国際公約」と言える。
韓国の元徴用工裁判で資産差し押さえの判決が出た時、日本国内では「国際法に違反している」との指摘が多かったが、日本が東京五輪を中止・返上することは、国際公約の一方的な破棄を意味するということはなぜか誰も言わない。
もちろん、招致活動の時点では新型コロナウイルスが世界を襲うことなど誰も想定していなかったが、もし我々がやらなかったら、「マドリードやイスタンブールでやるべきだった」と内外から批判が噴出する虞れは十分にある。日本の対外的な信用は失墜し、今後はサッカーのW杯など、世界的なビッグイベントの招致が難しくなる可能性もある。反対派はそうしたことを理解しているのか。
さらに、来年の2月には北京で冬季五輪が開催される。中国は何が何でも実行するだろう。世界の人が北京五輪開催を目の当たりにし、「北京はやったのに、なんで東京はできなかったのか」と日本は世界から厳しい目に晒される。その時に後悔してももう遅いのだ。このことも決して忘れてはならない。