太陽光発電に原発並みの規制を|奈良林直

太陽光発電に原発並みの規制を|奈良林直

わが国の太陽光パネルの設備容量は62ギガワット(GW、1GWは100万kW)で、国土面積当たりでは、中国の8倍、米国の23倍にも達し、断トツの世界1位である。


7月3日、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流の起点近くに、大規模な太陽光発電所(メガソーラー)が設置されている。土石流との因果関係は今のところ不明だが、政府は調査に乗り出した。災害を引き起こす可能性のある山間部での設置が今後規制されれば、太陽光発電推進政策に影響を及ぼす可能性がある。

土石流の主因はずさんな盛り土

約2キロメートルにわたり住宅122棟を巻き込み、30人近い死者・行方不明者を出した今回の土石流の起点となった地点には、5万立方メートルの盛り土があり、これが集中豪雨により水を含んで大きく崩落し、土石流を引き起こした。

「昔から水の通り道だから、こんなところを埋めたら大変なことになる」と地元の人は盛り土が行われる前から言っていたという。熱海市によると、2007年に土地所有者の不動産業者から造成工事の申請があり、許可したが、住民から苦情が出て調査をしたところ、木くずやふろのタイルなどの産業廃棄物が盛り土に含まれていた。2011年に新しい土地所有者が熱海市などの指導で産業廃棄物を取り除いたという。

9日、地質学者の塩坂邦雄氏が記者会見し、造成工事では盛り土に加えて尾根が削られ、雨水の流れ込む範囲(集水域)が変化したことで、盛り土側により多くの雨水が流れ込むようになり、土石流を誘発した、と説明した。

高まる住民の不安

衛星写真やマスコミの報道映像で、削られた尾根に多数の太陽光パネルが設置されていることが分かる。梶山弘志経済産業相は6日、原因究明の一環として、太陽光発電所の事業者への聞き取り調査や水脈調査を行うことを明らかにした。小泉進次郎環境相は、全国の太陽光発電所の立地規制を検討すると表明した。

わが国の太陽光パネルの設備容量は62ギガワット(GW、1GWは100万kW)で、国土面積当たりでは、中国の8倍、米国の23倍にも達し、断トツの世界1位である。政府は2030年までにさらに20GWの太陽光パネルの増設を計画しているが、山間部におけるメガソーラー設置のため土木工事や森林伐採を行うことは、景観を損なうだけでなく、防災の観点から慎重を期す必要がある。

今回の土石流と太陽光発電所との因果関係は確認されていないが、災害を引き起こしかねない山間部への発電設備設置に対する住民の不安を払拭しなければならない。太陽光パネルの設置場所の環境アセスメント、事業者の事業能力、事業開発後の国や自治体の立ち入り調査など、太陽光発電事業についても原子力発電所並みの厳しい規制が必要ではないか。(2021.07.12国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

関連する投稿


「米国による平和」は終わった|田久保忠衛

「米国による平和」は終わった|田久保忠衛

10年以内に中国は米国よりも強くなると見るドイツ人は56%に達しており、米国は頼みにならないので欧州の防衛に投資すべきだと考える向きは60%に及んでいる。


台湾をリムパックに招かないのは遺憾だ|太田文雄

台湾をリムパックに招かないのは遺憾だ|太田文雄

3月末にバイデン政権が公表した「国家防衛戦略」のファクトシート(概要説明文)は「中国に対する抑止強化」をうたっている。リムパックへ台湾を招かなかったことは、これに沿った措置とは到底思えない。


泊原発運転差し止め判決と原告弁護団|奈良林直

泊原発運転差し止め判決と原告弁護団|奈良林直

北海道電力泊原子力発電所1~3号機の運転差し止めを認める判決を札幌地裁が出した。判決は、北電が取り組んできた安全対策に注目せず、裁判の長期化で事実上の「時間切れ」が来たとして、予想される津波と防潮堤の高さの議論だけで運転差し止めの判断を下した。


敬服すべきブレジンスキー氏の洞察力|田久保忠衛

敬服すべきブレジンスキー氏の洞察力|田久保忠衛

ブレジンスキーが今から25年前に書いた「巨大な将棋盤」には、中国の現状、さらにはロシアがウクライナに侵攻し、目的を達成すればユーラシア大陸、ひいては世界の大国にのし上がるだろうと予想されていた。ブレジンスキーは日本に対しても鋭く言及している。


岸田政権は財務省の呪縛から完全に脱せよ|田村秀男

岸田政権は財務省の呪縛から完全に脱せよ|田村秀男

メディアの多くが財務省のレクチャー通り、しばしば国の会計を家計に例える。家計は何はさておき働き手の収入の範囲内に支出をとどめざるを得ないのだが、国家財政は家計と全く異なる。それを混同すれば国力の衰退を招く。


最新の投稿


違う意見に耳を傾けたら相手をもっと嫌いになった! クリス・ベイル『ソーシャルメディア・プリズム』(みすず書房)

違う意見に耳を傾けたら相手をもっと嫌いになった! クリス・ベイル『ソーシャルメディア・プリズム』(みすず書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


徹底検証!中国で「宮廷クーデター」発生か|澁谷司

徹底検証!中国で「宮廷クーデター」発生か|澁谷司

世界では、習近平が退陣するのではないかというニュースが飛び交っている。一部のSNSでは、習近平主席がすでに半ば退位し、李克強首相が代行しているとの書き込みで溢れている。果たして、この「宮廷クーデター」(「反習派」による習主席の退位)の“噂”は本当なのか? 徹底検証する。


なべやかん遺産|「淡路島のシン・ゴジラ」

なべやかん遺産|「淡路島のシン・ゴジラ」

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「淡路島のシン・ゴジラ」!


参院選に暗雲!逃げずに正面から原発再稼働、憲法改正を訴えよ!|和田政宗

参院選に暗雲!逃げずに正面から原発再稼働、憲法改正を訴えよ!|和田政宗

酷暑のなか、もし電力が止まり冷房が止まってしまえば、命の危機にもつながる。国民は根本的な対応を求めており、もしそれを打ち出すことができなければ、大変な結果が待っているだろう。この1週間が決断すべき期間である。正面から訴えるべき政策については堂々と国民に訴えるべきだ。


【橋下徹研究⑪】「副市長案件」弁明の崩壊と橋下市長関与の証明|山口敬之【WEB連載第11回】

【橋下徹研究⑪】「副市長案件」弁明の崩壊と橋下市長関与の証明|山口敬之【WEB連載第11回】

6月20日以降、ツイートがない橋下徹氏。ほとぼりが冷めるまで待つ方針かもしれないが、いつまで「副市長案件」で逃げ切るつもりなのだろうか。「副市長案件」「遊休地だった」と抗弁する橋下氏の弁明には何の説得力もないどころか、事実を歪曲し隠蔽する悪意がはっきりと浮き彫りになっている――。【※サムネイルは『実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた』 (PHP新書)】