諸悪の根源は「単独親権」|三谷英弘

諸悪の根源は「単独親権」|三谷英弘

元プロ棋士・橋本崇載氏の衝撃の告発によって、「実子誘拐」という言葉をはじめて知った人も多いのではないだろうか。だが、この問題はいまに始まったことではない。「実子誘拐」根絶に向けて長年闘ってきた政治家の一人が、三谷英弘議員である。「女性の敵だ!」「DV男の味方だ!」などと猛攻撃を受けながらも、彼はなぜいまも、闘い続けるのか。月刊『Hanada』2020年7月号に掲載され、大反響を呼んだ記事がついに解禁!


見捨てられた子への虐待

子どもの意見は聞かないのか。

もちろん、裁判の段階で一定の年齢に達していれば子どもの意見を聞くことも多い。しかし、連れ去られた子どもたちは一緒にいる親の顔色を窺う。その子が何歳であろうと、「お父さんはひどい」「お父さんはひどい」と言って育てられると、次第に子どもも「お父さんはひどい」と思うようになる。その結果、不幸なことだが、「お父さんに会いたい?」と訊かれても、「会いたくない」という子どもに育ってしまう。

連れ去られた直後ならば「お父さんに会いたい」という子どももいるだろうが、半年、1年の間、お父さんの悪口を吹き込まれた子どもが「お父さんに会いたい」という気持ちを正直に吐露することなどできるだろうか。これを子どもへの虐待と言わずして何というのだろうか。

先のケースではまだ子どもが小さかったからか、子どもの意見は聞かれなかった。自分の意見を話す能力さえ認められない、そんな小さな子どもが、母親が仕事をしている夜の間、ずっと1人で放置されている。結果として、それを裁判所が追認するのは常識的に考えておかしくないだろうか。

裁判官も弁護士も、子どもの権利など実際には黙殺しているというのがいまの日本の姿だ。
裁判所は機能不全を起こしているといっても過言ではない。裁判官自身もこの手の案件はあまり積極的ではないのか、親子の関係性などの専門的な知見だけではなく、離婚に至る経緯や現在の境遇などについても調査官の報告を鵜呑みにする傾向が強い。事実認定は裁判官の職責であるにもかかわらず、事実上、調査官が行っているのだ。

いろいろ調べていくうちに、多くの方がこの問題で苦しんでいることがわかった。女性が虚偽のDVで男性を訴えるケースも多く、母親の言い分ばかりが通ってしまう。
これでは世の男性たちは報われない。

日本はなぜ単独親権なのか

城内実衆議院議員ツイッターより
共同養育支援議員連盟にて、上川陽子法務大臣に申し入れ。

なぜ、このようなことが罷り通るのか。

単独親権こそが諸悪の根源だ。

現在、先進国で単独親権なのは日本のみ。かつては米国も欧州もすべて単独親権だったが、いずれもここ半世紀の間に共同親権になった。日本だけがおかしかったのではないのだが、いつのまにか、日本だけが世界の潮流から取り残されてしまった。

単独親権から共同親権へ。
この法整備をするにあたっては、いまの日本と同様、どの国も苦労した。だが、子どもの権利をどう守るのかを考えつくし、その結果、共同親権が導入されたのである。

共同親権の導入に反対する人たちは、髪を切る、歯医者に行く、このような些細なことでも共同親権者の許可が必要になると主張している。共同親権では子育てがまったく進まないという理屈であるが、意味不明な主張と言わざるを得ない。

その証拠に、離婚を協議している間はまだ共同親権であるはずだが、実際は子どもを連れ去った側がすべて、子どもの進路すら決定している。先の言い分は、まさにためにする議論だ。

では、単独親権のメリットはどこにあるのか。
「見当たらない」というのが私の正直な感想だ。

単独親権の最大のデメリットは、子どもと一方の親との関係を断ち切ってしまうことにある。法的に親であるということを否定しておきながら、親なんだから養育費だけはしっかり払えというのは、そもそも議論として矛盾していないだろうか。

養育費を支払うということは、親として当然担うべき役割の一部である。そうであるならば、正面から養育費の支払い義務を含め、共同親権という形で親権を認めるべきだ。子どもに会えないだけでなく、支払った養育費が本当に子どものために使われているのか、現状ではそれを確認する機会すら与えられない。これではあまりに不公平だ。

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