国家存亡にかかわる「安倍ロス」|山岡鉄秀

国家存亡にかかわる「安倍ロス」|山岡鉄秀

日本だけではなく世界にも「安倍ロス」が広がっているが、心理的な喪失感に浸っている時間はない。「中国のオーストラリア支配化計画」に対して、主権を守るために獅子奮迅の戦いを続けているモリソン首相。菅総理はオーストラリアを孤立させず、自由と民主主義を護ることができるのか。


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ワシントンDCに「ケイトー研究所」というシンクタンクがある。共和党寄りのシンクタンクだが、共和党以上に自由主義的で、小さな政府と世界情勢不干渉主義に傾いているという評判だ。
 
そのケイトー研究所のシニアフェロー、ダグ・バンドウ氏が8月8日付で、「The Problem with Allies: It’s Time to Unfriend a Few Countries」 (同盟国との問題:いくつかの国とは決別する時が来た)という論文を発表した。
 
その内容を簡単に言えば、「アメリカは多くの国と同盟関係を結んでいるが、その究極的な目的はアメリカを守ることだ。役に立たない国との関係は見直したほうがよい」というものである。そして、「離婚候補」としていくつかの国を挙げている。
 
真っ先にやり玉に挙げられたのがサウジアラビアだ。
「サウジアラビアは天然資源を自らの享楽のために消費する王族が支配する王政国家で、民主国家ではないし、アメリカを含め世界中でキリスト教やユダヤ教を悪魔化するイスラム原理主義の守護者だ。曲がりなりにも信教の自由と選挙があるイランよりずっと悪い」
 
他の国への批判が続く。
「ドイツはまともな国だが、ヨーロッパ最大の経済大国なのに、自国と欧州の防衛に貢献しようとしない。6年前に2024年までにGDPの2%を防衛費に回すと約束したのに、去年は1.38%に過ぎない」

「フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテは最も露骨な反米大統領だ。20万人の死者を出したアメリカのフィリピン独立運動鎮圧に言及しながら、麻薬使用者や販売人に対する非合法の暴力や殺害をも奨励し、活動家やジャーナリストに対する暴力犯罪は無罪とする慣習を維持している。
 大統領就任初期にはアメリカを離れて親中になると宣言しながら、昨年中国の船がフィリピンの漁船にぶつかって沈めると、突然、比米協定にしたがって中国と戦争をしろとアメリカにけしかけた」

「トルコはロシアの脅威を封じ、中東への架け橋となるという、2つの期待される役割を果たしていないどころかロシアにすり寄り、EUの信頼を完全に失っている」

「安倍ロス」の本当の意味

このようにして、さらにいくつかの国への批判が続くのだが、最後に挙げられたのが日本だ。

「日本はもちろんいい国だ。豊かで清潔で礼儀正しく、複雑で異色で興味深い。しかし、隣接する中国と北朝鮮が軍事的に活発になっているにもかかわらず、日本はご都合主義で平和憲法の裏に逃げ込んでいる。
 そして、常に軍事的な大仕事はアメリカに依存している。世界第3位の経済大国でありながら、GDPの1%すら軍事費に回していない。日本が本当に中国に脅威を感じているなら、もっと自助努力すべきだ。第2次世界大戦は終わったのだ」
 
これがアメリカの本音とも受け取れる。日本は安倍政権下においても、憲法に指一本触れることができなかった。それでも、安倍総理の個人的資質で、日本が非難されて切り離されるような事態を防いできた。それは名人芸でさえあった。
 
その安倍総理がいなくなった日本はどうなるのか。
 
大事な友好国を孤立させ、同盟国アメリカに軽蔑されて孤立し、中華帝国に呑み込まれてしまうのか。それこそが、「安倍ロス」の本当の意味なのだ。感傷に浸っている猶予などない。

月刊『Hanada』2020年11月秋麗号

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