米が中国へ全面巻き返しを開始|田久保忠衛

米が中国へ全面巻き返しを開始|田久保忠衛

政治、経済、軍事、イデオロギー、サイバー、宇宙、技術などすべての分野におけるアメリカの応戦が開始。トランプ政権はとくに南シナ海について中国との軍事的対決に踏み切った!一方、日本は……。


中国の王毅国務委員兼外相は7月17日にロシアのラブロフ外相と電話会談をした際に、「(米国は)国際関係の基本ルールを破っている」と批判し、共に対抗しようと呼び掛けた。因果の関係を知ったうえでの発言かどうか。国際秩序の現状変更を求めてきたのは中国で、これに対する激しい応戦が政治、経済、軍事、イデオロギー、サイバー、宇宙、技術などすべての分野で米国によって開始された、と考えるべきだろう。

南シナ海で軍事対決

Getty logo

米中両大国が世界的に広がる新型コロナウイルスへの対応で激しく対立する中で、中国は領土、領海をめぐりこれまでより目立って攻撃的な姿勢を取り始めた。東シナ海では尖閣諸島周辺で日本の漁船を追い回す暴挙を平気で繰り返し、南シナ海では軍事演習を実施し、ヒマラヤのインドとの国境ラダックでは中国軍がインド側になだれ込んで流血の惨事を生んでいる。さらに中国は、ブータンの野生生物保護区に対する領有権を主張し始めた。

7月19日付産経新聞は一面トップで、日本最南端の沖ノ鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内を中国調査船が10日間連続で航行していると報じた。尖閣諸島と同様、相手に有無を言わせず、既成事実を着々と積み上げている。菅義偉官房長官は例によって例のごとく「毅然とした対応」「断固とした姿勢」で日本のEEZを守り抜くと述べるが、実効性のない言葉をいくら連ねても空々しく聞こえるだけになっている。

トランプ米政権はとくに南シナ海について中国との軍事的対決に踏み切ったと見ていい。ポンペオ国務長官は7月13日に、「南シナ海のほぼ全域にまたがる海洋資源に対する中国の主張は完全に不法だ」と決め付ける異例の声明を発表した。翌14日には米海軍のミサイル駆逐艦「ラルフ・ジョンソン」がスプラトリー(南沙)諸島付近を通航した。中国の過剰な海洋権益の主張を否定する「航行の自由」作戦の一環だ。

南シナ海で中国は7月1日から5日まで軍事演習を実施したが、米海軍は「ロナルド・レーガン」と「ニミッツ」の空母2隻が同じ時期に南シナ海で軍事演習を行い、さらに17日にも2回目の演習を実施した。

空しく響く護憲論

関連する投稿


トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

「交渉のプロ」トランプの政治を“専門家”もメディアも全く理解できていない。トランプの「株価暴落」「カマラ・クラッシュ」予言が的中!狂人を装うトランプの真意とは? そして、カマラ・ハリスの本当の恐ろしさを誰も伝えていない。


慰安婦問題を糾弾する「日韓共同シンポジウム」の衝撃(東京開催)|松木國俊

慰安婦問題を糾弾する「日韓共同シンポジウム」の衝撃(東京開催)|松木國俊

日米韓の慰安婦問題研究者が東京に大集合。日本国の名誉と共に東アジアの安全保障にかかわる極めて重大なテーマ、慰安婦問題の完全解決に至る道筋を多角的に明らかにする!シンポジウムの模様を登壇者の一人である松木國俊氏が完全レポート、一挙大公開。これを読めば慰安婦の真実が全て分かる!


「核爆弾の奴隷たち」北朝鮮驚愕の核兵器開発現場|石井英俊

「核爆弾の奴隷たち」北朝鮮驚愕の核兵器開発現場|石井英俊

「核爆弾の奴隷たち」――アメリカに本部を置く北朝鮮人権委員会が発表した報告書に記された衝撃的な内容。アメリカや韓国では話題になっているが、日本ではなぜか全く知られていない。核開発を進める独裁国家で実施されている「現代の奴隷制度」の実態。


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


米国を弱体化させるイスラエル甘やかし|上野景文(文明論考家)

米国を弱体化させるイスラエル甘やかし|上野景文(文明論考家)

これまでイスラエルをかばい続けてきたアメリカだが、ここで方向転換した。 これ以上、事態の沈静化を遅らせれば、どんどんアメリカと日本の国益が損なわれる!


最新の投稿


【今週のサンモニ】兵庫県知事選はメディア環境の大きな転換点か|藤原かずえ

【今週のサンモニ】兵庫県知事選はメディア環境の大きな転換点か|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


なべやかん遺産|「ゴジラフェス」

なべやかん遺産|「ゴジラフェス」

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「ゴジラフェス」!


【読書亡羊】闇に紛れるその姿を見たことがあるか  増田隆一『ハクビシンの不思議』(東京大学出版会)

【読書亡羊】闇に紛れるその姿を見たことがあるか 増田隆一『ハクビシンの不思議』(東京大学出版会)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

衆院選で与党が過半数を割り込んだことによって、常任委員長ポストは、衆院選前の「与党15、野党2」から「与党10、野党7」と大きく変化した――。このような厳しい状況のなか、自民党はいま何をすべきなのか。(写真提供/産経新聞社)


【今週のサンモニ】オールドメディアの象徴的存在|藤原かずえ

【今週のサンモニ】オールドメディアの象徴的存在|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。