そして、最後に地方債の日銀引き受けです。多くの方々が指摘していますが、国には中央銀行があり、通貨発行権があります。地方公共団体にはありません。
地方債を発行すれば、当然のことながら利子が付き、償還期間があります。地方債の日銀引き受けについては、6月4日の参院財政金融委員会で加藤毅企画局長が「日銀として地方債の買い入れには慎重である」との姿勢を改めて示しました。(https://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2020/06/278816.php)
「イロモノ扱い」されてしまった「日銀引き受け」
山本氏が財源とする地方債15兆円は日銀の引き受けがなければ、その公約は破綻します。もし山本氏が都知事となり、東京都が独自にコロナを災害として指定、その後東京都が15兆円の地方債を発行しても、日銀は引き受けません。待っているのは利子の支払いと償還期間です。
発言力がある山本氏が都知事選において「地方債の日銀引き受け」を打ち上げたことで、この政策は「イロモノ扱い」されてしまいました。こうした山本氏の手法は地方債の日銀引き受けを、むしろ遠退かせています。
真剣に地方債の日銀引き受けを求めている一人として、大変残念です。
他の道府県からみて納得できない
また、山本氏のように東京都のような財政的に豊かな地方公共団体が、15兆円以上の莫大な債権を発行して、日銀に引き受けさせることは、甚だ疑問です。
日銀に地方債を引き受けるよう求めるのであれば、全国の地方公共団体の地方債を広く引き受ける仕組みをつくるべきです。東京都という特定の地方公共団体の債権だけを日銀が引き受けるというのは、他の道府県からみて納得できません。
前回の寄稿で述べたように、地方自治体の財政力によって、補償・協力金の内容やスピードに差が出るということが出るのは、国家の危機管理としては危ういものです。
財政力が強い東京都のように補正予算成立前に独自の経済対策を実施した自治体があるように、今回の休業要請における協力金は、都道府県の財政力で差がつきました。
今後、国政において、新型感染症対策の検証や特措法の見直しが行われていく中で、地方債の日銀引き受けを認めるべきではないかと提言しています。
この政策は、財政に余力のない地方自治体を救うための手法であるにも関わらず、なぜ財政力のある東京都の地方債のみを日銀に引き受けさせるのでしょうか
何度も指摘しますが、山本氏が本気で地方債の日銀引き受けを実現させるのであれば、東京都知事より国会で議論すべきです。