ただ、予想外だったことがあります。それは、月刊Hanadaプラスに掲載された3日後の6月15日に、れいわ新選組代表の山本太郎氏が東京都知事選における公約の財源として「15兆円の地方債を発行する」と発表しました。
さらに山本氏は「最終的に日銀に買い取らせることで解決できる」と主張したため、地方債の日銀引き受けについて注目が高まっています。
しかし、冷静に考えてください。私も地方債の日銀引き受けを提言してきましたが、現状では純然たる債務になります。
山本氏は公約実現のためには、地方債の日銀引き受けについて「東京都から国を動かす」と話していますが、そこにメスを入れるなら、山本太郎氏は都知事ではなく、国会議員に立候補すべきです。
そこで、本稿では都知事選に立候補した山本太郎候補者による「地方債15兆円」について、内容が現実的であるかどうか指摘していきます。
そもそも「地方債15兆円」を発行できるのか?
山本氏は15兆円の地方債発行について、次のように発言したと報じられています。
「東京都の実質公債費比率では、地方債で20兆円は確実に調達できる総務省から確認を取っている」(https://news.goo.ne.jp/article/hochi/nation/hochi-20200618-OHT1T50316.html)
山本氏は「総務省に確認した」と度々発言していますが、確かに一般論としては発行できるかもしれません。
東京都の平成30年度バランスシートは、34兆6265億円、負債6兆7486億円、資産から負債を引いた正味財産の部合計は27兆8779億円です。
数量政策学者の高橋洋一氏によれば、東京都が20兆円の債権を発行しても負債が資産を超えることはないので「財政論の観点から見ると、良いか、悪いかはべつとして“あり”の政策」と動画で解説しています。(https://www.youtube.com/watch?v=EYOLfDBg3pw)
この動画を見て「まさか発行できるとは!?」と驚いた方がほとんどだと思います。
ただし、高橋氏が述べたようにこれは財政論上の発行できるかどうかの話です。
地方債の起債手続きを再確認
地方債の起債手続きによれば、
〈地方公共団体が地方債を発行するときは、原則として、都道府県及び指定都市にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事と協議を行うことが必要とされています。総務大臣又は都道府県知事の同意がある場合には、元利償還金が地方財政計画の歳出に算入されるとともに、公的資金の充当が可能とされており、仮に同意がない場合であっても、地方公共団体は議会に報告すれば地方債を発行できることとされています。但し、地方財政の健全性等の観点から、財政状況が悪化している地方公共団体が地方債を起債するときは、総務大臣又は都道府県知事の許可が必要とされています。また、総務大臣は同意又は許可をしようとするときは、あらかじめ財務大臣と協議することとされています。〉財務省 地方債制度の概要(https://www.mof.go.jp/filp/summary/filp_local/tihousaiseidonogaiyou.htm)
地方債を引受先の資金面から分類すると、公的資金(財政融資資金、地方公共団体金融機構資金)及び民間等資金(市場公募資金、銀行等引受資金)に大別されます。もし、東京都知事が公的資金として15兆円~20兆円の債権を発行すると国と協議したとしても、財務大臣や総務大臣が首を縦に振ることはないでしょう。
地方公共団体が国と協議し、同意を得られなかった場合は「地方議会に報告」後に「同意のない地方債」として発行できますが、都議会を通過できるとは思えません。