新型コロナウイルスに対するアルコールなどに代わる消毒液候補について、経済産業省の委託で独立行政法人、製品評価技術基盤機構(NITE)が行ってきた検証試験の中間結果(2020年5月28日付)をめぐり、大きな社会的混乱が発生している。
中間結果の発表を受けて、次亜塩素酸水に消毒の効果がないかのように誤って報道されたのに加えて、文部科学省が次亜塩素酸水の噴霧器による使用を控えるよう全国の小中学校に通達するという、あまりにも拙速な行政対応をしたためだ。
メディアの誤報を文科省が追認
最近まで全国の自治体、小学校、病院、一般家庭などで、次亜塩素酸水の利用が順調に拡大し、次亜塩素酸水を用いた超音波加湿器や空気清浄機はメーカーの生産が追いつかない状態が続いていた。
次亜塩素酸水は、塩酸か塩化ナトリウムの水溶液を電解して得られ、わずかに酸性になるように調整したもの。米環境保護庁(EPA)では次亜塩素酸水を新型コロナウイルスの推奨消毒剤として登録し、中国国家衛生健康委員会も室内空気、水道設備表面、皮膚と粘膜の消毒に向いていると使用指針に明記した。韓国でも大量に利用されている。
ところが、NITEが再委託した国立感染症センターと北里大学の試験結果に食い違いがあって、NITEの中間結果では、試験が継続中のため「効果が確認されていない」とされた。これが、消毒の効果がないかのように報道され、利用者の混乱を招いた。
また、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長の「いかなる消毒薬も噴霧することは危険」という発言を基に、「噴霧での使用は安全性について科学的な根拠が示されていない」としたNITEのファクトシートの記述も混乱の元になった。
文部科学省は6月4日、「学校における消毒の方法等について」と題する事務連絡を出し、この中で「次亜塩素酸水の噴霧器の使用については、その有効性及び安全性は明確になっているとは言えず、学校には健康面において様々な配慮を要する児童生徒等がいることから、児童生徒等がいる空間で使用しないでください」と通達した。
この結果、全国の自治体や小中学校から、次亜塩素酸水と超音波噴霧器が一斉に撤去される事態となり、あまりの混乱に全国からNITEや経産省に苦情が殺到しているという。