これが杞憂であればいい。いまはもう少し前向きに考えてみよう。
冷静にみれば、日中関係が1972~92年の蜜月時代に戻ることも、92~10年の戦略的パートナーシップ時代に戻ることもない。日中GDPが逆転した2010年を境に、中国は日米に支援を請う発展途上国から、米国に対抗しようとする現代社会主義強国を目指すようになり、日本の安全保障上の仮想敵からは外せなくなった。中国共産党としても執政党の正統性が抗日戦争の歴史に依拠している以上、日本を真のパートナーと認めるわけにはいかない。
さらに尖閣をめぐる対立があり、台湾統一を悲願とする中国と台湾の民主主義と独立性が安全保障に直結する日本とでは、台湾問題でも必ず対立する。今回、日中関係が改善したように見えても、それはあくまで戦略的コミュニケーションの上に成り立っている脆弱な関係なのだ。今後の外交駆け引きは、表立って角を突き合わせている対立時代より、よりテクニックが必要とされるだろう。
まずは、来年の習近平訪日が1つの山場だ。習近平サイドは新天皇陛下が最初に会見する外国要人の立場を望んでいたが、その栄誉はトランプに与えられることが早々に決まった。矢板論文にもあったが、習近平は日中関係の基礎となる5つ目の政治文書の発表を求めているらしい。しかも、習近平が掲げる政治スローガン「人類運命共同体」を盛り込みたいとか。
私はそのような習近平の権威づけに加担してはならないと思うが、ならばどのような政治文書ならよいのか。日本が最終的な外交的勝者となることを願ってやまない。
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著者略歴
ジャーナリスト。1991年、産経新聞社に入社。奈良支局、大阪文化部、同社会部を経て、九八年秋から一年間、上海・復旦大学に語学留学。帰国後、外信部を経て、2001年に香港、02~08年に北京に駐在。09年秋に同社を退職。近著に『「中国の悪夢」を習近平が準備する』(徳間書店)、『習近平王朝の危険な野望』(さくら舎)。