日中首脳会談は「まれにみる失態」か?
10月に行われた7年ぶりの日本首相の中国公式訪問および日中首脳会談について、『月刊Hanada』2018年1月号に寄稿されていた矢板明夫氏の「安倍訪中は日本外交の大勝利」論文をたいへん興味深く読んだ。というのも、私は今回の日中首脳会談は、「外交の安倍」にしては稀にみる失態ではなかったか、という危惧をずっと抱いていたからだ。
12月1日の米中首脳会談で米中貿易戦争が一時休戦に入ると予測しての動きだったとすれば、トランプと連携していたともいえるが、日米ともタイミングが悪くないか。最悪の結果への準備をするという意味で、矢板論文の反対側から日中首脳会談を再度考察してみたい。
中国に与えた豪華な「土産」
10月25~27日、実に7年ぶりの日本の安倍晋三首相の中国公式訪問が行われた。このときの中国の歓迎ぶりは救世主がやってきたといわんばかりで、天安門広場に何本もの日の丸が翻り、解放軍軍楽隊は「君が代」を演奏した。
日中関係が冷え込んだ2014~2016年の国際会議の場を借りた安倍・習近平会談の写真には、わざと国旗を用意しないなどの非礼が続いていたことを思えば、感慨深い光景であった。2012年の反日暴動のときには、日の丸は攻撃のターゲットになっていたのだ。
実際、知り合いの国際関係学の教授は「天安門事件後に孤立していた中国に、日本が最初に手を差し伸べてきたとき以来の歓迎」、別の学者は「天皇訪中はいつになるのか」といった感想を漏らした。だが、中国側が素直に喜びや感謝を示しているときほど、日本は用心せねばなるまい。外交とは、相手を嬉しがらせるより、悔しがらせることのほうがうまいやり方というのは言うまでもない。
中国側体制内知識人が素直に感謝を述べ、敵視していた日の丸を天安門広場に飾りたてたのは、日本が中国に与えた「土産」が大変豪華であったからだ。