「つくる会」教科書不合格 文科官僚の不正|藤岡信勝

「つくる会」教科書不合格 文科官僚の不正|藤岡信勝

「新しい歴史教科書をつくる会」が作成した中学歴史の歴史教科書が文部科学省の検定で不合格となったが、それは検定は結論ありきの異常なもので、いわば文部科学官僚の不正によるものだった! 検定結果と不正の内容の告発第一弾!(初出:『Hanada』2020年4月号)


水増しのあの手この手

以下、具体例を挙げる紙幅がないので、上記に述べた以外の、いままでに判明した欠陥箇所水増しの手口を箇条書きにしておく。

▽他社の教科書では認められている同じ記述が自由社については認められない、というケースがある。東京書籍の中学校の教科書、山川出版の高校の教科書などですでに判明している。特定の会社の教科書だけを狙い撃ちし、欠陥品という不当なレッテルを貼って倒産に追い込むという所業は、特定の会社を依怙贔屓し、利益を供与するのと全く変わらない汚職である。

憲法第15条第2項には、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と書かれている。いずれ教科書調査官の罷免を要求する展開になるだろう。

▽社会慣習上存在しない勝手なルールを決めて、自由社の検定不合格用に使いまくる、ということが行われた。たとえば、「 」で括った文章は、原文からの直接引用以外に使ってはいけないというルールは存在しない。しかし今回の検定では、「 」付きの文章はことごとく摘発され、「生徒が直接引用であると誤解するおそれのある表現である」という指摘事由が頻出した。

特定の学術論文や論争的な論文の場合は例外として、一般の書籍では古典からの引用などでも、要旨や大意を示すために「 」で括って示すことは普通に行われている。教科書も例外ではない。そもそも、前回の検定ではこのような括弧の使い方が認められていたのである。

▽何とも名づけようのない姑息なやり方が行われたケースもある。その極めつきは、令和の元号の発表が数カ月予定より遅れたため、検定提出のための申請本の印刷が間に合わず、やむなく「■■」と表記しておいたところまで欠陥箇所に指定されたという事例である。こういう表記にならざるを得なかったのは政府の予定変更の責任であるのに、民間に不利益をこうむらせるのは承服できない。

検定に名をかりた不正行為

以上見てきたとおり、このたび起こったことは、「検定」に名をかりた文部官僚による不正行為なのである。文部省が犯した信じがたい一大スキャンダルだ。国政上の重大問題である。

不正は正されなければならない。被害を受けた自由社の失われた利益は回復されなければならない。国会は特別委員会をつくって徹底的に審議し、被害者の権利回復の手立てを早急に取らなければならない。今回の「不合格」処分を取り消し、特例として採択に参入できる道を開くべきである。

関係者の処分は免れない。憲法違反、国家公務員法違反を追及されるだろう。教科書調査官は懲戒免職が相当である。また、これを許した外部の審議会メンバーも何らかの処分が必要だ。

教科書検定制度そのものの改善も急務だ。誤解しないでいただきたいのだが、私たちは教科書裁判を起こした家永三郎のように、検定制度が違憲だとして廃止を求めているわけではない。405の検定意見のなかには、妥当なものもある。制度の意義は失われていない。

しかし、今回は明らかな不正行為が行われたのである。背後にいかなる勢力があったのかは、いまのところ分からない。しかし、不正の温床となった規定は廃止すべきである。

かつて、1986年の『新編日本史』検定事件の頃は、検定意見は、強制力のある「修正意見」と、従う法的義務のない「改善意見」とに分かれていた。今日では、両方とも強制力のある意見として扱われている。これはおかしい。強制力のある検定意見は、事実の間違いなどに限定することを検討すべきである。検定意見の区別を復活すべきだ。

何のための検定か、本質論を論じなければならない。「検定意見」は教科書の改善に資するためのものであるはずだ。それを教科書を落とすための道具として「欠陥箇所」に読み替えるのは、概念の混乱である。

私たちは、申請本を市販本として発売し、検定資料を公開して、国民が誰でも情報にアクセスできるようにする。そのうえで、広く呼びかけて「文科省の教科書検定を検定する」国民的な運動に取り組みたいと思う。読者のご参加をいただければありがたい。

検定不合格 新しい歴史教科書

関連する投稿


なぜ今なのかが不可解な旧統一協会解散請求|西岡力

なぜ今なのかが不可解な旧統一協会解散請求|西岡力

これは宗教団体に対する「人民裁判」ではないか。キリスト教、仏教、神道などのリーダーを含む宗教法人審議会が解散命令請求に全会一致で賛成したことに戦慄を覚えた。


【ファクトチェック最前線「特別編」】共同親権の核心を〝報道しない自由〟|新田哲史

【ファクトチェック最前線「特別編」】共同親権の核心を〝報道しない自由〟|新田哲史

虚偽事実にしろ、偏向報道にしろ、オモテに出ている〝ファクト〟は検証しやすい。しかし世の中には、メディアが存在をひた隠しにするファクトも。ネットでは「報道しない自由」と揶揄するが、最近筆者がその対象になっていると感じるのが共同親権の問題だ。


「共同親権」を潰す赤いネットワークと北朝鮮の家族法|池田良子

「共同親権」を潰す赤いネットワークと北朝鮮の家族法|池田良子

日本共産党や社民党に近い「赤いネットワーク」はなぜ、離婚後共同親権制に反対するのか。彼らの本当の目的は、「離婚後も男性による女性と子供の支配が継続することを断固阻止する」ことにある――。(画像は駒崎弘樹氏twitterより)


堂々と歴史戦を戦おう―佐渡金山|島田洋一

堂々と歴史戦を戦おう―佐渡金山|島田洋一

今後最も重要なのは、韓国の歴史歪曲に正面から反撃し、間違った歴史認識を正すことである。地元有力紙、新潟日報のように韓国の歪曲に「理解」を示す姿勢は百害あって一利なしだ。


「伊藤詩織」問題 金平茂紀と望月衣塑子の正体|山口敬之

「伊藤詩織」問題 金平茂紀と望月衣塑子の正体|山口敬之

「犯罪事実があった」とする伊藤詩織氏の主張は、検察と検察審査会によって、2度にわたって退けられた。日本の法制度上、刑事事件としては完全に終結し、伊藤氏の私を犯罪者にしようという目論見は失敗に終わったのである。ところが、私に一切取材依頼や問い合わせを行わないで、新聞やテレビで発信をしたり、記者会見で発言をしたりした人物が、少なくとも2名いる。そのうちのひとりが金平茂紀であり、もうひとりが望月衣塑子である――。(初出:月刊『Hanada』2018年1月号)


最新の投稿


【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

参院法務委員会筆頭理事として、改正入管法の早期施行を法務省に働きかけてきた。しかしながら、改正入管法成立前から私に対する事実無根の攻撃が始まった――。