朝日新聞が誘導する成年後見制度の地獄|長谷川学

朝日新聞が誘導する成年後見制度の地獄|長谷川学

使ったが最後、ある日突然、赤の他人の弁護士や司法書士、社会福祉士らがあなたと家族の財産・権限のすべてを奪う――いま現実に起きている悪夢の実態を報じず、ひたすら制度推進者の側に立ったトンデモ報道を続ける朝日新聞。「家に帰りたい」「人生を返してほしい」「こんな制度利用しなければよかった」と切実に訴える被害者の叫びをなぜメディアも行政も聞こうとしないのか。全国で深刻な被害が続出している成年後見制度の闇を暴く!


成年後見制度はあまりにも多くの問題を抱えているが、最大の問題は認知症の人や障害者の意思が完全に無視されていることにある。  

この制度の設計にかかわった司法関係者はこう語る。

「一言で認知症と言っても、その程度は様々。植物状態で寝たきりの人を除き、認知症の人はみな、好き嫌いなどの意思表示ができるし、一定の判断能力も持っています。ところが、後見人の多数を占める士業は、本人意思の尊重どころか、本人と会うことすら嫌がり、通帳管理をしているだけというのが実態です」  

成年後見人の在り方について、民法858条は「成年被後見人(注・認知症の人や障害者のこと)の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない」と定めている。  ところが実際の後見の現場を取材すると、「認知症の人や障害者には意思がない」 「話を聞いても無駄」と言って、本人と会いたがらない士業後見人の何と多いことか。彼らは、本人、家族だけでなく、本人を診療している医師や看護師、さらに介護士、ケアマネージャーといった人たちとの連携を怠り、通帳管理以外は事実上何もしない。本人が亡くなるまで、一度も本人と会わなかった士業後見人もいた。

例外的な事例ばかりを強調し、現状を報じない朝日新聞

ところが朝日の連載で、本人意思が尊重されず、本人のために何もしない士業後見人のことに触れたのは、10回のうち第5回(なぜ専門職の選任が多いの?)のたった一度きり。それも、深く掘り下げることなく、次のようにあっさりスルーして終わりだ。

「後見人は一度選任されると交代は難しく、金銭管理だけで生活面はほとんど見てくれないといった専門職への不満も多い」  

私は、成年後見制度はすでに破綻していて使い物にならないどころか、「使うと地獄を見る」ぐらいに思っているが、どうやら朝日は、このどうしようもない制度を、いまだに国民に使わせたがっているようだ。  

それは、連載の第1回目を見れば一目瞭然だ。第1回目のタイトルは「認知症・経済的虐待で出番」。つまり、認知症の親のお金を取ったり虐待する子供がいるので、そうした親を守るためには後見人が必要だ、というわけだ。  

朝日はこう書いている。 「無職の息子や娘が判断能力が衰えた高齢の親の年金を使ってしまい、本人が困窮する経済的虐待も成年後見制度の出番になる」  

たしかに、引きこもりなどで職を持たない子供が認知症の親の年金を勝手に使うケースは相当あるだろう。また、生活保護受給者のお一人様が認知症になった場合も、成年後見制度を含めた対策が必要だろう。  

こうしたケースでは、自治体などが本人を説得して家裁に後見利用を申し立てさせるか、もしくは自治体の首長が本人に代わって申し立てるかのどちらかになることが多い。後見の利用申し立てができるのは、本人、四親等内の親族、もしくは自治体首長に限られるからだ。

「でも、生活保護受給者のような貧しい人が認知症になった場合、報酬がもらえない可能性があるので、弁護士、司法書士は後見人になりたがらず、拒否することが多い。報酬が払えない人の後見人は、ボランティアの市民後見人(大学や社会福祉協議会の講座で後見人教育を受けた市民のこと)か、被後見人(後見を受ける認知症などの人のこと)を選べない社会福祉士に回されるのが一般的です」(ある市民後見人の話)  

報酬を払えない生活困窮者、虐待を受けている親を守るために後見人をつけるというのは、成年後見制度の数少ない“光の部分”であり、セールスポイントと言えるかもしれない。

だが現状では、自治体申し立ては後見全体の一握り。また認知症の生活困窮者の場合、後見人がつけられずに放置されるケースのほうが圧倒的に多い。  

つまり、後見事案全体のうちの例外的な事例なのだ。朝日が、連載の第1回にあえてこうした事例を取り上げたのは、現状では、それ以外にこの制度にセールスポイントがないからだろう。

悪夢のような制度「家に帰りたい」「私の人生を返してほしい」

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