現在好評発売中の月刊Hanada2019年6月号 [雑誌]の巻頭、藤橋進さんによる「直筆御製発見 昭和天皇の大御心」は昭和史に関する重大な資料の発掘である。発見された資料は罫紙に100ページあまり、すべて陛下の手書き。
これまで昭和天皇の御製は御製集『おほうなばら』『昭和天皇実録』などに870首が載っているが、今回の原稿には未発表の御製が200首以上含まれている。
なかでも、岸信介元総理が死去したときに詠まれた3首は歴史的な意味を持つ。岸元総理に対する陛下の温かい気持ちが伝わってくるし、岸元総理の孤独な戦いへの深い同情が読み取れるからだ。
1)「國の為 務たる君 秋またで 世を去りにけり いふべさびしく」
2)「その上に きみのいひたる ことばこそ おもいふかけれ のこしてきえしは」
3)「その上に 深き思ひを こめていひし ことばのこして きみきえにけり」
このうたの欄外には「言葉は聲なき聲のことなり」と注がついている。聲なき聲とは、安保騒動のとき、岸元総理が国会を囲むデモ隊に対して「野球場や映画館は満員。私は声なき声に耳を傾けなければならない」と言った、あの言葉。
これらの御製から感じ取れるのは陛下の岸元総理に対する深い信頼であり、安保改定に対する理解である。
改元にあたって、この論文をぜひ読んでほしい。日本人にとって皇室がいかに重要な存在であるかがよくわかる。
同じ資料を入手した朝日新聞がどう報じたかも興味深い。
(編集長・花田紀凱)