高比良くるまの分析
お笑いコンビ「令和ロマン」の高比良くるま氏が、テレビ番組で「政治系動画」がカネになる仕組みについて解説し、話題になっている。
炎上させて動画を視聴させ、収益を得るための「燃料」として、政治系動画がいま最も流行っている、というのだ。
政治は簡単には結論が出ない問題や対立を含むため、話の収束点はなく延々と論じ続けられる。また、メディアではなく個々の配信者やアカウントの持ち主が政治系動画を扱う分には、総理や大臣などに関する憶測や陰謀論を並べ立てても本人から直に抗議が来ることはまずない。実際には政治家同士が対決していなくても、しているかのように編集して見せてカネに変えているのだ、と。
確かに、政治は延々とネタにできるフリー素材と化している。選挙前になればなおのこと、多くの候補者がこれでもかと「ネタ」をネット上に放流する。街頭演説などはその最たるものだろう。近年の選挙では、街頭演説の場に撮影用の棒にスマホを括りつけた個人の配信者の姿も目立つ。
日本の人々は政治に関心を持たないと言われ続け、支持率も50%越えがやっとという状況が続く中、なぜ政治は「稼げるコンテンツ」化しているのか。
その謎を紐解くヒントになりそうなのが、木下健、オフェル・フェルドマン著『令和日本の政治は「感情」で動く:国会審議・街頭演説・SNS戦略』(ミネルヴァ書房)だ。
木下氏は福岡工業大学社会環境学部教授で政策科学が専門。フェルドマン氏はイスラエル出身で現在は京都大学東南アジア地域研究所で連携教授を務める、社会心理学の専門家。これまでにも『政治家はなぜ質問に答えないか』『政治家のレトリック』という共著を出している。後者については以前この欄でも取り上げている。
https://hanada-plus.jp/articles/1054
政治家の実際の受け答えやインタビューを分析し、そのレトリックや表情から、政治家が何を伝えようとしているのかや、有権者にもたらす効果について明らかにしてきた。
今回は副題にもあるように国会審議や街頭演説、SNSでの発信を中心に、政治家たちがどのような「感情」を元に有権者への指示や認知を広げているかを分析している。
政治演説の修辞法とは
政治的コミュニケーションには、演説で聞き手の感情に訴え、反応を喚起するための修辞法がいくつもあるのだという。
「今から3つの問題を指摘します」などというリスト。「横暴な自民党に比べて我が党は…」などとする対比。「なぜ、生活が苦しいんだと思いますか?」と投げかけ、その謎を解いていくパズルの解法。「今から、重要な話をします」などと前置きする見出しと制約。「今の国会の、議論無きあり方、私は問題だと思います」などとする体制の明確化、などなど。
こうした分類を知るだけで、街頭演説等での政治家の発言を聞く耳も変わるだろう。単に盛り上がった、面白かった、具体的な政策があったというだけではなく、「こちらにどのような反応を期待して、その修辞法を使ったのか」を考えるヒントになるからだ。
本書では山本太郎氏とバイデン大統領の比較や、兵庫県知事選での斎藤知事や「二馬力選挙」で批判されたN国の立花孝志氏が有権者に与えた効果、野党の各代表の弁論術の分析、田中角栄から安倍晋三まで、主要な総理大臣のレトリック比較などが行われる。
いずれも面白いが、いくつか紹介すると、例えば維新の会の吉村代表の演説。「社会保険料が高すぎて腹が立ったので、自分の給与明細を持ってきた」とギャグをかましたが〈福岡の聴衆の反応は鈍かった〉という。お膝元の大阪では受けても、福岡ではスベってしまったようだ。

