そして、ウクライナの鉱物資源のうち、特に米国が興味を持っているのは、楯状地で局所的に発見されているレアアースの存在です(下図の薄緑色の地域)。

ウクライナのクリティカル・ミネラル分布図
以上のような地域で、米国が鉱山開発および鉱山の操業を行なえば、一定の抑止力にはなると考えられます。復興のための資金を生む可能性もあります。鉱山協定を結ぶことはウクライナにも利益があります。
しかしながら、この地域の平和に欠かせない前提条件としては、プーチンと友好的な関係を持つトランプ政権の存在が挙げられます。4年後にこの関係が続くとは限りません。
いずれにしても、今回の破談によって停戦は遠のいたものと考えられますが、米国とウクライナの双方に利益がある鉱山開発のオプションがある限り、関係修復は不可能とは言えません。歩み寄るのはトランプ政権の方かもしれません。
外交万能主義の敗北だが……
薮中三十二氏:本当に前代未聞の首脳会談ですよね。「こんなことが起きるんだ」とびっくりしました。私もずっと外交交渉を見てきましたが、こんなことが起きたことはないです。これは結果的にアメリカ、それからウクライナ双方にとってダメージがあると思います。
トランプ大統領、本当は「ピースメイキングプレジデント」と“平和を作る大統領”として歴史に残りたいと思っていたはずが、それできなくなったわけです。
もう一つはトランプ大統領は「レアアース」鉱物資源に関心を持っています。ようやくその交渉の場ができたにも関わらず、少なくとも当面駄目になっていますよね。そ
ういう意味ではトランプ大統領にとってもマイナスダメージ、でもより大きなダメージがあったのは、ゼレンスキー大統領の方です。何といってもロシアと戦うにはアメリカの支持・支援が必要です。それがこんな形で決裂した。これはゼレンスキー大統領により大きなダメージがあると思います。どうしてこんなことになってしまったのか。