実はインフレが進行している今こそが、財政健全化のチャンスです。政府支出は必ずしも物価と連動しない一方で税収は上がるため、インフレは基礎的財政収支を改善します。
また、インフレは自動的な資産課税ともいえます。資産を保有しているのは高齢者であるため、社会保障の世代格差の是正にも繋がります。重要なのは、インフレと賃金上昇を連動させ、景気を拡大することです。
そして、このときに禁じ手となるのが、基礎的財政収支の改善をキャンセルするバラマキ政策です。しかしながら、極めて残念なことに、少数与党である自民党は、立憲民主党・維新の会・国民民主党のいずれと組んでも「何でも国が面倒を見る」「税金を払わない国にする」という路線に従ってバラマキを要求される運命にあります。
ここで、「何でも国が面倒を見る」「税金を払わない国にする」という両立不可能なディレンマを政府に共に求め続けてきた元凶は、長期間にわたって政府を悪魔化してきた日本のテレビです。せっかくの寺島氏の正論も、日本社会の不合理な幻想の前には無力といえます(笑)。
「福島の教訓を忘れたか」というお題目
さて、話は変わって、エネルギーの話題です。
膳場貴子氏:日本の電力を将来的にどう賄っていくかを示したエネルギー基本計画。3年ぶりの改定が閣議決定されました。示されたのは2040年度の電源構成。現在7割を占める火力発電を3割から4割に減らし、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電は現在の2割ほどから最大5割まで増やす計画です。
一方、原発への回帰も鮮明になり、現在の1割弱から2割程度まで増やします。基本計画には、福島の事故以降、「原発依存度を可能な限り低減する」の文言が盛り込まれていましたが、今回はこれを削除し、最大限活用すると明記、廃炉が決まった原発の建て替えを進める方針も打ち出されました。どうなんでしょう。この計画を策定するプロセスで、福島第一原発の教訓はちゃんと反映されているんだろうかとか、国民的な議論を十分経たと思えないんですけど。