【読書亡羊】激震の朝鮮半島に学ぶ食と愛国心  キム・ミンジュ『北朝鮮に出勤します』(新泉者)、キム・ヤンヒ『北朝鮮の食卓』(原書房)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


自分たちは韓国より優秀だという話をひっきりなしに聞かされ、癪に障ったのも事実だ。私がわが祖国、大韓民国のことをどれだけ愛していることか。大好きな人たちがみんなそこにいるのに。

こうもてらいなく「祖国を愛している」と言い、しかもその理由を「大好きな人たちが暮らしている」と言える、著者の愛国心にしびれた。

さらには、韓国の国旗である太極旗を巡ってのエピソードもある。北朝鮮の人々は、徽章と呼ばれる金日成、金正日のバッジをつけている。一方で、韓国側の職員は乾電池に書かれた太極旗のデザインすら、入国時にサインペンで塗りしておかないと国際問題になりかねない。

そのことを知った著者は、こう述べている。

突然、心が折れた。自分の中にそれほど強くあるとは思わなかった愛国心が心をもたげた。どうして韓国の国旗を黒く塗りつぶすことができるのか。

これまたしびれた。日本ではこうした心情を吐露すれば「右翼、極右」と言われかねない。もちろん著者からすれば、日本人からそう言われることに複雑な思いを抱くかもしれない。

だが、自国の国旗を塗りつぶせと言われたら、著者のように感じることこそが当然の反応なのではないかとも思う。

「国も他者も愛す」ことは可能

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書評 読書亡羊 梶原麻衣子

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