【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

いまもっぱら話題の「103万円、106万円、130万円の壁」とは何か。そしてそれは国民健康保険料にどう影響するのか(笹井恵里子『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より)。


「106万円の壁」を超えられないか

低所得で高い国保料に悩んでいるなら、社会保険に加入できる事業所でアルバイトやパートをするのも一案だ。「ファイナンシャルプランナーが勧める“ちょこっと”起業」と内容は同じで、ギリギリ社会保険の加入対象になるような働き方を目指すのである。

勤め先の企業の従業員規模が51人以上で月収8万8000円以上、2か月以上の雇用見込み、週20時間以上働いている、学生ではないという条件がそろえば、勤め先の社会保険に加入できる。


前出の「家族の『扶養』になる」場合は「年収130万円の壁を超えない範囲で働く」と記したが、あえて「年収106万円(106万円÷12か月=月収8万8000円以上)」を超えるのだ。

遺族年金を減額されてしまうこともある

ただし、遺族年金を受け取っている人は本当に社会保険に加入したほうがいいか、よく考えたい。遺族年金とは国民年金や厚生年金保険に加入していた被保険者が亡くなった時、被保険者によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができる年金だ。

不幸にして配偶者が亡くなり、遺族年金を受け取りながら自身が生活の足しにアルバイトやパート勤務をしていたとする。社会保険の適用条件が従業員人数101人以上の事業所だったのが、今年(2024年)10月から51人以上の事業所に対象が広がり、勤め先もその条件を満たし、勤務先から「社会保険に加入しますか」と聞かれた時――あなたは「老後に自分の厚生年金がプラスされることになるし良さそうだな。加入しよう」と思うのではないだろうか。

もちろん問題はないのだが、自分が老齢年金を受け取ることになった時、自身が頑張って支払ってきたその厚生年金の給付分、遺族年金を減らされてしまうということを知ってほしいのだ。

例えば遺族厚生年金を月10万円受け取っていたとする。そして自身もパート勤務で社会保険(健康保険と厚生年金)に加入し、65歳以降月2万円の厚生年金を受け取れるようになった。すると遺族厚生年金を月8万円に減額されてしまうということ。

総額の年金を増やすためではなく、仕事にやりがいをもち、さらなる収入アップを目指しているから労働時間を増やして社会保険に加入する――そんな決断であるなら、素敵だし応援したい。

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笹井恵里子

笹井恵里子

1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て2018年にフリーランスに。日本文藝家協会会員。著書に『救急車が来なくなる日ーー医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『潜入・ゴミ屋敷』『実録・家で死ぬ』(ともに中公新書ラクレ)、『老けない最強食』(文春新書)など、新著に『国民健康保険料が高すぎる!保険料を下げる10のこと』(中公新書ラクレ)がある。


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