【読書亡羊】あなたは本当に「ジャーナリスト」を名乗れますか?  ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著、澤康臣訳『ジャーナリストの条件』(新潮社)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


最低限守るべき5つの方法

何が客観であり主観であるのかは、ともすれば哲学問答となり、「それぞれの中にある客観性を担保すればいい」とか「そもそも人間には主観しかなく、『客観』などない」といった話で終わってしまうため、本書では客観的方法によるジャーナリズムの「事実確認の規律」として以下の5つを提案している。

1 もともとなかったものは決して付け加えない。
2 読者・視聴者を決して欺かない。
3 自分の方法と動機をできるだけ透明に開示する。
4 自分自身の独自の取材に依拠する。
5 謙虚さを保つ。

これらは客観的方法であるという以前にジャーナリスト、あるいはすべての発信者が常に留意していてしかるべき事項のようにも見える。逆に言えば、この程度のことさえも守れないまま「ジャーナリスト」として発信を行っている人が多いことを示唆してもいるだろう。

本書は400ページ超のボリュームで、ジャーナリズムの何たるかを説く指南書であり、発信時に留意すべきルールブックであるとともに、情報の受け手である読者・視聴者にとっても重要な問題を投げかけている。

何度も繰り返し本書に立ち返って、民主主義を担保するジャーナリズムの在り方とは何かを自問自答する作業が、本書を読んだ後から始まるといってもいいだろう。

責任を負うのはジャーナリストだけではない

とはいえ、ここではコンパクトに本書のエッセンスを紹介したいので、ものすごいボリュームの本書の中からたった一つ、ジャーナリストが絶対に守らなければならない「鉄の掟」を挙げておこう。

ジャーナリズムの本質は、事実確認の規律にある。

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