問答無用の捏造事件
読売新聞大阪本社が4月6日夕刊に掲載した記事(「紅麹使用事業者 憤り」)に談話の捏造があったにもかかわらず、さらに社内検討を経ないまま「確認が不十分だった」と公表。捏造した社会部主任が諭旨退職したほか、関係した社員らが懲戒処分を受けるという出来事があった。
【読売新聞】 読売新聞大阪本社は30日、小林製薬製品による健康被害に関連し、取引先企業の反応をまとめた4月6日夕刊の記事で、企業社長の談話を 捏造 ( ねつぞう ) した社会部主任(48)を諭旨退職、取材に当たった岡山支局記者(53
取材をしていない人間が別の記者の書いた記事を書き換える。デスクというポストがある新聞社では往々にしてこういうことはあると聞く。事実にないことを書いてしまう「捏造」は極端な事例だが、「角度をつける」「誇張する」「断言する」などの範囲まで広げれば、書き換えた経験のある記者、書き換えられた経験のある記者は少なくはないだろう。
今回の事例は問答無用の捏造記事で取材を受けた相手からの告発が契機となっているが、書いた記事、掲載された内容、動画等での発信が果たしてジャーナリズムに値するものかどうか、発信者は常に自問自答を繰り返さなければならない。
ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著、澤康臣訳『ジャーナリストの条件――時代を超える10の原則』(新潮社)を読んでいると、その自問自答とはこれほどまでに深く、執拗なまでに繰り返されなければならないものなのかと驚くほどだ。
そして読売新聞は、処分で終わりにするのではなく、捏造記事が掲載されるに至った経緯、こうしたことが実際に起きてしまった背景、社内の内部統制の在り方にまで踏み込んで、実態を「透明化」する必要があるのではないかと感じざるを得ないのだ。