現在の外務省の情勢分析は甘い
トルコはこうした各国での世論工作に必死であり、フランス国会の情報委員会では、フランス国内においてトルコがクルド人とアルメニア人(トルコが1910年代に大虐殺)に対するスパイ活動を行っていると報告された。トルコは過去、ドイツでのスパイ活動も明らかになっている。
日本国内でも同様の状況が危惧され、「トルコは友好国」であるから言っていることが正しいということは全くない。トルコが友好国であるとしても、現在のエルドアン政権は、強権的、覇権的な政権である。また、他の西側の友好国においても日本国内で情報収集活動は行われており、各国の意思に沿った世論工作や世論醸成活動が我が国では行われているのだ。
さらにトルコのエルドアン大統領は、ハマスを「テロ組織ではなく、自由の戦士」「イスラエルはテロ国家」とイスラエルを非難しており、欧米をはじめとする諸国からはトルコはテロ組織を支援する国家とみなされ、トルコ国内の組織や個人が米国等の制裁対象になっており、孤立の度合いを深めている。
なお、親イラン武装勢力フーシ派に拿捕された自動車運搬船はトルコからインドに向かう船であった。日本郵船のマークが船体には大きく描かれているのに、イスラエルの実業家が共同保有しているとの情報は、どこから漏れたものなのか。
こうした国際情勢を多角的に分析しなければ、混迷する中東情勢の解決の糸口は見えてこない。どの蛇口を絞ればハマスのようなテロ攻撃がなくなるのかを政府はしっかりと考え、外交力、国際社会における政治力を発揮すべきだ。
私は現在の外務省の情勢分析は甘いと思う。ハマスのような非道なテロ攻撃を根絶するために、テロを支援する国々に対し制裁をはじめとし我が国は強く行動すべきである。
著者略歴
1974年、東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業(日本外交史)。1997年、アナウンサーとしてNHKへ入局。新潟局、帯広放送局、大阪放送局を経て、2009年7月より仙台放送局に勤務。東日本大震災の報道や取材に携わる。2013年、第23回参議院議員選挙において、宮城県選挙区で初当選。2019年、全国比例区で再選。