ハマスを支援する、イランとトルコ
11月20日、紅海において、日本郵船運航の自動車運搬船が、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に乗っ取られ、乗組員が人質となった。
武装戦闘員たちは、「米国に死を、イスラエルに死を」などと叫び、フーシ派は、イスラエルによるガザ地区攻撃への報復として、イスラエルと関係がある貨物船を拿捕したと声明を出した。この船は、トルコからインドに向かっていた。
イスラエルとハマスによる戦闘は、その原因を冷静に分析しなくてはならない。そもそもの原因は、ハマスがイスラエルに対する越境テロ攻撃によって、1200人を殺したうえ、イスラエルの人々を拉致し人質として連れ去ったことであり、ハマスに原因がある。
イスラエルによるハマスの攻撃により、ガザ地区の民間人が犠牲になっていると報道されるが、ハマスはガザ地区の住民を“盾”としている。ハマスを攻撃するにあたって、民間人が犠牲になるのはそのためであり、民間人の犠牲をなくすためにも、ハマスは住民を“盾”として使うことをやめるべきだ。ハマスが住民を“盾”に使っているとの非難は、ドイツも行っている。
こうしたことからも、ハマスはガザ地区の住民やパレスチナのために戦っているのではなく、自らの組織を守るためにテロを起こしたと分析できる。イスラエルとサウジアラビアの国交正常化が模索されるなか、ハマスには自分たちの存在意義が薄れ、アラブ諸国から見捨てられるのでないかとの危機感があった。
しかし、ハマスがテロ攻撃をするにあたって、資金の裏付けや支援する国や団体がなければ即座に失敗する。そうした支援国がどこかと言えば、国際テロ組織や各国の動きから見ると、イランでありトルコであると指摘できる。
イランとトルコ、苦しい国内事情
両国はこれまで、ハマスに資金や武器を支援してきており、今回の越境テロ攻撃の際にはイラン製の武器が使われたことが明らかになっている。
イランは、米国による制裁緩和でテロ支援資金が動かしやすくなり、トルコは国内にハマスが拠点を置くことを認め、国内でのハマスの資金調達を何ら制限せず、米国から先週非難された。また、トルコは、ハマスの母体である国際テロ組織・ムスリム同胞団も全面支援しており、ハマスが資金や武器でテロ攻撃を仕掛けやすい環境を作ってきた。
さらに、両国はその内部事情からもハマスのテロ攻撃を後押ししている。イランは、昨年、女性に着用が義務付けられている布「ヒジャブ」を着用しなかったとして風紀警察に拘束された22歳の女性が死亡したことから、イラン全土に抗議活動と反政府運動が広がった。内政から国民の目をそらせ、イスラム原理主義に基づいた外政に国民の目を向けさせたいという事情がある。
そしてトルコも同様に、ハイパーインフレで生活困窮者が続出、通貨リラは各国通貨に対し大暴落を続けるなど国内は大混乱しており、国民の目を外政に向けさせる必要があった。そのなかでトルコは、日本やドイツ、スイス等各国のクルド人団体や個人を「テロ組織PKKを支援している」として資金凍結の対象としたが、これらの団体や人物は各国においてテロリストとして摘発されておらず、トルコの野党HDP(国民民主主義党)の支援者が対象となっている。
なお、野党HDPはクルド人などからなる政党であり、トルコ国会に議席を保有していたが、トルコ政府の圧力によって今年、政党の解散に至っている。
「トルコはクルド人を弾圧していない」という情報が日本国内でSNS等で流布されているが、これは誤った情報であり、この問題での欧米各国のトルコへの制裁についてはネットでも容易に調べられるので、ご覧いただければと思う。