JR東海は川勝知事を訴えろ!
しかし、これは全くの嘘です。公開されているJR東海の財務諸表を調べてみると、長期債務残高は「4・94兆円」。そのうち、「3兆円」は元本返済30年猶予、超低金利の財政投融資の債務で、コロナ禍にもかかわらず、かなりの健全経営です。
川勝知事は意見書を送る前から、
「6兆円になる債務、長期債務残高ではやっていけない。ところが、(現在)6兆円になっています」
「借金が6兆円ありますからね。長期債務残高が。そういうなかでどうやっていくのか」
と、「JR東海の長期債務残高は六兆円」を連発していました。
意見書を作成していた事務方は川勝発言を鵜みにしたのでしょう。実際、担当部署に「『5兆円以内』を優に超えている」の内訳を教えてほしいと何度も問い合わせましたが、誰ひとり答えられなかった。
川勝知事は、早稲田の大学院で経済学を専攻した経済学者のはずですが、「62万人の命の水」といい、「JR東海の長期債務残高は6兆円」といい、数字の間違いが多い。本当に経済学者かと疑いたくなります。
私が間違いを指摘して、意見書は修正されましたが(岸田総理の事務所にも“こっそり”修正版が届けられました)、それにしても今回のはひどい。県知事が一企業を名指しして、「経営の危機に瀕している」とマスコミで語り、県のウェブサイトにも掲載したのです。
JR東海を本当に経営の危機に陥れる重大な過ちにもかかわらず、川勝知事は現時点で、今回の“風評加害”について謝罪していません。
JR東海は、リニア妨害のことも含めて、業務妨害で川勝知事を訴えたらどうか。
私が危惧しているのは、川勝知事のリニア妨害によって、政府と静岡県の関係が悪化、静岡県が“制裁”を受けることです。
今年のG7サミットは開催国が日本で、1年を通して関係閣僚会合が全国で行われます。閣僚会合が開かれると、地元は盛り上がりますし、さまざまな経済的メリットがある。
静岡は東京からのアクセスもいいし、富士山もよく見えますから、会合するのには絶好の場所。選ばれてもよさそうなものなのに、今回、選ばれませんでした。私には、リニア妨害を続ける川勝知事に対する「制裁」のように見えます。
もし制裁だったとすると、川勝知事のリニア妨害によって、静岡県民全体が割を食っていることになる。今後、そういった「目に見えぬ制裁」が増えてくるかもしれません。
川勝知事は静岡放送「LIVEしずおか」の2023年1月6日放送の新春知事対談に出演し、JR東海の社長が県庁へ来た際のことをこう言いました。
「静岡県を悪者にするという最後の花道をつくるつもりかと思った。2027年の開業を邪魔しているのは、すべて静岡県だと」
JR東海をスケープゴートにしようとしたのかもしれませんが、静岡県を悪者にしているのは、紛れもない川勝知事自身です。
リニアは、一企業の事業ではなく、国家プロジェクト。『知事失格』のなかでも書きましたが、南海トラフ地震、首都直下型地震が来たら、現在の東海道新幹線はひとたまりもありません。その時に首都圏、関西圏を結ぶ基幹インフラとして、中央新幹線が重大な役割を担います。一知事が妨害していい話ではないのです。
川勝知事は口がうまく、多くの静岡県民、いや国民をミスリードしています。
一人でも多くの人に『知事失格』を読んでいただき、「川勝劇場」終幕の「花道」をつくりましょう。
(初出:月刊『Hanada』2023年4月号)
「静岡経済新聞」編集長。1954年静岡県生まれ。1978年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。政治部、文化部記者などを経て、2008年退社。現在、久能山東照宮博物館副館長、雑誌『静岡人』編集長。著作に『静岡県で大往生しよう』(静岡新聞社)、『家康、真骨頂、狸おやじのすすめ』(平凡社)などがある。