英国王戴冠式と頭痛のタネ「ヘンリー・メーガン夫妻」|八幡和郎

英国王戴冠式と頭痛のタネ「ヘンリー・メーガン夫妻」|八幡和郎

もうすぐ行われる英国のチャールズ新国王とカミラ王妃の戴冠式。 英国王室で、いま何が問題になっているか、徹底解説!


Getty logo

ウィリアム王子は、セント・アンドリュース大学で知り合った庶民の娘であるキャサリン妃(ケイト・ミドルトン)といったん破局を噂されたものの、結婚にこぎ着けた。ウィリアム王子が未来の花嫁に求めた条件には、ほかの男性との交際経験があることがあったのは、父母の不幸な関係の反映だ。
 
長い時間をかけて妃殿下になる素質があるかを見極め、心構えができての結婚で、伝統的な価値観とは離れているが、生活も公務も安定している。ただ、これまでは、皇太孫とその妃という気楽な立場だったが、皇太子夫妻となると批判されることも多くなるので、これまでと同じように気楽に伸び伸びとしていられるかは未知数だ。
 
ヘンリーは、ヘンリーとメーガンが出演したアメリカのジャーナリスト、オプラ・ウィンフリーによるインタビュー番組についてウィリアムと話合ったとき、飛びかかってきて、シャツを鷲掴みにし、ねじ伏せ、ネックレスは引きちぎられ怪我させられているといっている。ウィリアムが怒ったのは当たり前だが、彼もかなり頑固で自意識が高いようだ。

サセックス公爵ヘンリー王子は、軽率な振る舞いが多く、ダイアナもあちこちで問題を起こすことを嘆いていたが、アフガニスタンでの軍務で活躍し、明るく人気があった。2018年にアフリカ系の血も引く米国女優で離婚歴のあるメーガン・マークルと結婚した。
 
2019年に長男のアーチー(奇抜ではないが王室の伝統から外れた名前)が誕生したが、メーガンの分不相応な要求やパワハラ、王室の伝統への反抗的態度は摩擦を引き起こし、2020年に「主要王族の立場から引退し英国と北米を行き来して生活する」と宣言した。
 
翌年には、女子が誕生し、リリベットと名付けられたが、女王の幼少時の家族内での愛称で不自然だった。そして、贅沢な生活を支えるため、さまざまな契約をして、暴露本や番組を公表し王室との関係は悪化するばかりである。
 
今回の本で暴露されている話としては、ここまでに触れたもののほかに次のようなものもあるがさすがにひどい。

女王が危篤になったとき、ヘンリーは父からの連絡で、スコットランドのバルモラル城に来るようにいわれたが、メーガンは同行させるなと言われて傷ついた。そういったあとで、チャールズはキャサリンも来させないといったのだが、それを先に言って欲しかったというのだが、母親の死に際して、ヘンリーにそこまで気を遣う必要もあるまい。
 

デリカシーのないメーガン

Getty logo

女王の死を知らされたのは機中でBBCの報道によってだと不満をいっているが、到着してからでも怒るような話ではない。

メーガン妃が出産直後だったキャサリン妃に、「ホルモンの影響で妊産婦の記憶力などが低下するベイビーブレーンだろう」と面と向かって指摘したところ、キャサリン妃が怒り、ウィリアムからも「英国での作法に反する」と叱られたというが、当たり前だ。

17歳のころから、コカインを何度か使用した、混雑したパブの裏の屋外で初体験した、あの世にいる母と交信する「能力」を持つという女性に頼ったなどというのも、本を売るためにインタビュアーの餌食になった感じである。

アフガニスタンで、イスラム主義勢力タリバンの戦闘員を25人殺害したとし、「相手が人間だと思ったら殺せない」「チェスの駒だと思うように訓練された」などというのは、イスラム教徒から自分たちだけでなく、英王室や軍隊、さらには英国民へのテロを惹起する可能性がある。

それに比べると、「ガールフレンドはいずれもパパラッチの餌食になって注目を浴びるのを嫌がり、次々に去って行った」とか「イートン校では同級生たちに歯が立たず悩んだ」といったあたりは、気の毒にと思う。

ヘンリーが自分が生まれたときに、チャールズがダイアナに「スペア」ができたといったのが、1月10日に発売になった暴露本のタイトルになったことはすでに紹介した。
 
英国の王室でもエリザベス女王とマーガレット王女はとても仲のいい姉妹だったが、マーガレットは離婚経験者のタウンゼント大佐との結婚を、もし何かの時に女王の夫となる危惧もあって許されなかったのをきっかけに、乱れた生活を送ることになった。
 
そのことがあるから、エリザベス女王はヘンリーとマーガレットを重ね合わせ、ばっさりと切り捨てることを躊躇したと言われている。
 
また、一般にロイヤル・ファミリーに対する報道では、君主には肯定的なことがほとんどになり、皇太子、それ以外という順番でよいしょする報道が減って、批判が多くなる。皇太子時代の陛下と雅子様に対するやや厳しい報道や、現在の秋篠宮家への袋たたきにもそういう面がある。
 
しかも、それに王室とか宮内庁のスタッフは、抗議してくれないので、世間はそれを信じるから、当事者にとっては不公平だと腹立たしいことである。
 
そういう意味では、宮内庁も最近の悠仁様に対するいかになんでも未成年者に対してふさわしくなく、また、他の皇室メンバーとの比較でも不均衡にひどい報道は、悠仁様の人格形成にも悪影響をおよぼしかねないと心配であり、少し対策を考えるべきだ。
 
ヘンリーも暴露の数々について、王室が自分たちをフェイク・ニュースから守ってくれないし、自分が遠回しに事実でないと反論しても耳を傾けてもらえないので、すべて赤裸々に暴露しないと自分たちは守られないというのには一理ある。
 
しかし、それにしては、チャールズ国王、カミラ夫人、兄夫婦などについての無意味な暴露話が多すぎて、これでは、彼らは手紙もメールのやりとりも電話もできないと思うのだが、どうなのだろうか。

関連する投稿


日本が誇る大手食品メーカーに激震!ミツカン「種馬事件」①実子誘拐の地獄|西牟田靖

日本が誇る大手食品メーカーに激震!ミツカン「種馬事件」①実子誘拐の地獄|西牟田靖

「お前! 何者だと思ってるんだ、お前!! この場でサインをしなければ、片道切符で日本の配送センターに飛ばす」「中埜家に日本国憲法は関係ない」。日本が誇る大手食品メーカーが、婿に対してとんでもない人権侵害を行っていた――。2022年8月号に掲載され、大反響を呼んだ記事を特別無料公開!


欧州の極右政党は “日本モデル”に学べ!|八幡和郎

欧州の極右政党は “日本モデル”に学べ!|八幡和郎

フランスの大統領選挙決選投票で、中道派で現職のエマニュエル・マクロン大統領が、極右のマリーヌ・ルペン候補を破って当選した。フランスに限らずヨーロッパの政治事情に日本人は疎い。この大統領選挙の意味、ヨーロッパ政治の今後、八幡和郎氏が徹底解説!


【読書亡羊】皇室を巡る「公と私」の軋轢 江森敬治『秋篠宮』(小学館)

【読書亡羊】皇室を巡る「公と私」の軋轢 江森敬治『秋篠宮』(小学館)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


日本のAUKUS参加を模索せよ|岩田清文

日本のAUKUS参加を模索せよ|岩田清文

全ては、わが国の安全保障を確実にし、抑止力を強化するためである。ジョンソン英首相はファイブアイズへの日本の参加について2020年9月16日、「私たちが考えているアイデアだ」とも発言している。


「男系の皇統」維持策示した報告書を歓迎する|百地章

「男系の皇統」維持策示した報告書を歓迎する|百地章

今回の報告書が男系の皇統維持の立場に立ち、旧宮家の男系男子孫を養子とする方策を提示したことは当然とはいえ画期的であり、心から歓迎したい。一方で、立憲民主党の泉健太代表や西村智奈美幹事長の主張は全く的外れである。


最新の投稿


【シリーズ国民健康保険料①】とにかく誰もが困っている「国民健康保険料」|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料①】とにかく誰もが困っている「国民健康保険料」|笹井恵里子

突然、月8万円に……払いたくても払えない健康保険料の実態の一部を、ジャーナリスト・笹井恵里子さんの新著『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より、三回に分けて紹介。


【シリーズ国民健康保険料②】あまりに重すぎる負担…容赦のない差し押さえも|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料②】あまりに重すぎる負担…容赦のない差し押さえも|笹井恵里子

税金の滞納が続いた場合、役所が徴収のために財産を差し押さえる場合がある。だが近年、悪質な差し押さえ行為が相次いでいるという(笹井恵里子『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より)。


【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

いまもっぱら話題の「103万円、106万円、130万円の壁」とは何か。そしてそれは国民健康保険料にどう影響するのか(笹井恵里子『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より)。


【今週のサンモニ】重篤な原子力アレルギー|藤原かずえ

【今週のサンモニ】重篤な原子力アレルギー|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】激震の朝鮮半島に学ぶ食と愛国心  キム・ミンジュ『北朝鮮に出勤します』(新泉者)、キム・ヤンヒ『北朝鮮の食卓』(原書房)

【読書亡羊】激震の朝鮮半島に学ぶ食と愛国心 キム・ミンジュ『北朝鮮に出勤します』(新泉者)、キム・ヤンヒ『北朝鮮の食卓』(原書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!