安定的な皇位継承策等を議論する政府の有識者会議が12月22日、最終報告書をまとめ、岸田文雄首相に提出した。
画期的な旧宮家からの養子案
報告書は、皇嗣秋篠宮殿下から悠仁親王へと続く男系男子による皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないとの前提のもとに、皇族数を確保する基本的な方策として次の2案を示した。
第一は、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案である。報告書は平成29年の国会の付帯決議にあった「女性宮家」の語を避け、しかも女系天皇に繋がることのないよう、子には皇位継承権を与えない方法や、男性の配偶者およびその子には皇族の身分を与えない方法を示した。
第二が、男系の皇統維持のため、戦後、皇籍を離脱した旧11宮家の男系男子孫を皇族の養子として迎える案である。有識者会議の行ったヒアリングでも、21人のうち18人が男系を支持し、旧宮家からの養子案ないし旧宮家の男子を直接皇族に迎える案を全面的に否定したのは2人だけであったことを考えれば、これは当然であろう。
平成17年の有識者会議報告書は、女系天皇を容認し、第1子を優先するものであった。しかし、これは約2000年もの間、先人たちの叡智(えいち)と血の滲むような努力によって守り伝えられてきた皇室の男系の伝統を否定するものである。その意味で、今回の報告書が男系の皇統維持の立場に立ち、旧宮家の男系男子孫を養子とする方策を提示したことは当然とはいえ画期的であり、心から歓迎したい。
速やかに特例法の制定を
この報告書に対して、立憲民主党の泉健太代表や西村智奈美幹事長は「論点のすり替え」「本質の先送り」などと批判しているが、これは的外れだ。
国会の付帯決議は「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について」速やかに検討を行うことを政府に求めている。
このうち「女性宮家の創設」についていえば、かつて民主党の野田佳彦政権下でまとめられた「女性宮家」案は二つあり、第一が民間人配偶者と子を皇族とする案、第二が配偶者および子は皇族としない案であった。今回の報告書では、女性皇族が皇族以外の男子と婚姻した場合にはその子に皇位継承権を与えない方法や、配偶者と子は皇族にしない方法が提示されており、付帯決議の要請に応えていることは明らかだ。
「安定的な皇位継承の確保」についていえば、将来、悠仁親王を支える男子皇族を確保しておくことこそ、男系による皇位の安定的継承を確保するための第一歩である。だからこそ、報告書は「皇族数の確保を図ることが喫緊の課題」と考え、まず旧宮家の男系男子孫を養子として迎える案を示したのであった。それ故、「論点のすり替え」でも何でもない。
先の退位特例法に倣い、国会が叡智を傾けて速やかに養子特例法を制定することを期待している。( 2021.12.27国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)