日本政府の発信力は壊滅的
情報戦は「日本が世界から後れを取っている」分野である。海外から流入してくるディスインフォメーションやフェイクニュースをどうするかという「受け」の問題もさることながら、日本から発信して海外世論に訴える発信力の弱さも、かねてから懸念されてきた。
例えばまもなく2月22日の竹島の日がやってくるが、竹島の領有権について、日本の宣伝はどの程度行われ、効果を生んでいるだろうか。
島根県の竹島問題研究室所長の下條正男氏は、これまでの日本政府の姿勢に「海外宣伝以前に、国内の啓発すら不十分」と厳しい評価を下している(『竹島VS独島』ワニプラス)。
しかし急にねじを巻いて「海外世論にも影響を及ぼさねば」とやり出しても、そううまくはいかないだろう。「私たちはこんなに正しいのです!」と叫んでも、誰も振り向かないどころかかえって日本に対する信頼を低下させかねない。
ロシアや中国の宣伝が、実に独りよがりに聞こえることは多々あるが、これを反面教師にすべきだろう。そのためにも、本書は大いに役立つ。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。