共和党主導で米の対中強硬姿勢強化か|島田洋一

共和党主導で米の対中強硬姿勢強化か|島田洋一

日本は米国政治全体の動きを冷静に見据え、ふらふら引きずられて梯子はしごを外されないよう主体的に考え、行動しなければならない。


米中間選挙の結果、下院で共和党が多数となり、来年1月以降、議長および全委員長ポストを確保して、議事運営の主導権を握る方向となった。

下院外交委員長に就任予定のマイケル・マッコール議員(現外交委員会共和党筆頭理事)は米議会きっての対中強硬派として知られる。

下院外交委員長にタカ派

台湾の防衛力および国際的地位の強化を目指す台湾政策法案が9月14日に上院外交委を17対5の圧倒的多数で通過したが、下院の動きは鈍かった。下院の議事運営は、台湾訪問で世界の耳目を集めたものの、バイデン大統領同様、デタント志向のペロシ議長が取り仕切ってきた。

業を煮やしたマッコール議員は共和党の同僚議員36人と共に9月28日、独自の台湾政策法案を下院外交委に提出した。基本は上院の超党派法案に合わせつつも、台湾「当局」という「時代遅れ」の呼び方をやめ、台湾「政府」と呼ぶことを求める等、より踏み込んだ内容となっている。

今後、台湾問題を含む対中国政策に関しては、下院外交委がより強硬な方向への先導役を担うのではないか。日本政府や国会はその動きを注視しつつ、素早く対応していかねばならない。

今年10月、米政府は、人工知能(AI)、スーパーコンピューター分野に特に焦点を当て、先端半導体とその製造装置の対中輸出規制徹底を打ち出した。

かねて商務省が輸出規制ルールの対中適用において「臆病」だと批判してきたマッコール議員は次のように述べている。

「遅きに失したが、正しい方向での第一歩だ。商務省の産業安全保障局(BIS)がこの方針を最も厳格な基準で施行し執行するなら、中国共産党の戦略目標の核心を叩くことになる。我々は法に基づき、BISがいかに許可を出し、出さなかったか、完全に透明性ある報告を求める。執行基準が緩ければ、宣言倒れに終わる」

共和党主導の下院がどこまで厳しく、バイデン政権の商務省の政策執行を監視し追及するか、ここも重要な意味を持ってくる。

脱炭素原理主義にブレーキも

一方、気候変動問題に関し共和党は、化石燃料を敵視する脱炭素原理主義を退け、エネルギー自立の達成と米企業の国際競争力維持を重視しつつ、テクノロジー開発を通じた無理のない二酸化炭素(CO2)削減を追求する立場である。

実際、トランプ政権の時代には、米国は世界最大の石油・天然ガス産出国となり、エネルギー自立をほぼ達成する一方、CO2排出量の削減においても絶対量で世界1位の実績を上げている(国際エネルギー機関=IEA=報告)。

気候変動対策を名目に、民主党主導で進められてきた太陽光・風力発電関連事業者への補助金バラマキや、石油・天然ガス事業者の活動を妨げ、投資意欲を削ぐ種々の規制や増税措置にはブレーキがかかり、今後更新されないものが少なからず出てくるだろう。

バイデン政権は脱炭素原理主義を高唱し続けるだろうが、日本は米国政治全体の動きを冷静に見据え、ふらふら引きずられて梯子はしごを外されないよう主体的に考え、行動しなければならない。(2022.11.21国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

関連する投稿


人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」|石井英俊

人権弾圧国家・中国との「100年間の独立闘争」|石井英俊

人権弾圧国家・中国と対峙し独立を勝ち取る戦いを行っている南モンゴル。100年におよぶ死闘から日本人が得るべき教訓とは何か。そして今年10月、日本で内モンゴル人民党100周年記念集会が開催される。


ディープステートの正体|なべやかん

ディープステートの正体|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

旧安倍派の元議員が語る、イランがホルムズ海峡を封鎖できない理由|小笠原理恵

イランとイスラエルは停戦合意をしたが、ホルムズ海峡封鎖という「最悪のシナリオ」は今後も残り続けるのだろうか。元衆議院議員の長尾たかし氏は次のような見解を示している。「イランはホルムズ海峡の封鎖ができない」。なぜなのか。


8647―「トランプ暗殺指令」が示したアメリカの病理|石井陽子

8647―「トランプ暗殺指令」が示したアメリカの病理|石井陽子

それはただの遊び心か、それとも深く暗い意図のある“サイン”か――。FBIを率いた男がSNSに投稿した一枚の写真は、アメリカ社会の問題をも孕んだものだった。


ヨーロッパ激震!「ロシア滅亡」を呼びかけたハプスブルク家|石井英俊 

ヨーロッパ激震!「ロシア滅亡」を呼びかけたハプスブルク家|石井英俊 

ヨーロッパに君臨した屈指の名門当主が遂に声をあげた!もはや「ロシアの脱植民地化」が止まらない事態になりつつある。日本では報じられない「モスクワ植民地帝国」崩壊のシナリオ。


最新の投稿


【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは  謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは 謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】

TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】

悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】「再エネ教」の信者の集会|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「再エネ教」の信者の集会|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。