「軍艦島は地獄島だった」の発端
先日、NHKに対し、昨年5月に国会で質問したNHK「緑なき島」問題のその後について問いただした。この問題は、昭和30(1955)年に制作されたNHKの短編ドキュメンタリー映画「緑なき島」が、「軍艦島は地獄島だった」と韓国のプロパガンダに使われているというものである。
「軍艦島」とは炭鉱で栄えた長崎県の端島のことであるが、問題の発端は、この「緑なき島」において、作業員が炭坑内の狭い坑道を上半身裸のふんどし姿で、つるはしを持って身をかがめて作業する姿を映しており、韓国がこの映像を使って「軍艦島での炭鉱労働は劣悪で、朝鮮人強制連行の証拠」と主張してきたことにある。
しかし、そもそも端島(軍艦島)炭鉱内とされる映像は軍艦島のものではないと、元端島炭鉱職員や旧島民は指摘している。このような姿で作業する場所は端島炭坑内には存在せず、「緑なき島」で作業員が着用しているヘルメットも端島炭坑で使われていたメーカーとは違うものであり、別の炭坑か何かで撮影した映像をはめ込んだのではないかとの指摘だ。
これに対しては、昨年3月の参院内閣委員会で私がNHKに質問したが、NHKの正籬聡(まさがき・さとる)副会長は、「映像の精査などの結果、別の炭坑で撮影された映像がこの『緑なき島』に使用されたという事実はなかった」と答弁した。
しかし答弁によれば、その根拠は、「緑なき島」が制作された昭和30年以前にNHKで撮影し保管されていた炭坑の映像を調査しただけのものであり、俳優やエキストラを使ってロケをして撮影した場合は含まれていない。
すでに編集前の映像は残っていないのかもしれないが、私の番組制作者としての経験からは、良い映像が撮れず別の炭鉱でロケをした可能性がかなり高いと考える。これはドキュメンタリーにおいて絶対にやってはならないことだが、「緑なき島」で作業員が着用しているヘルメットが端島炭鉱で使われていたものとは別のものであるとの証拠は揃っている。
だが、NHKは現在に至るまで見解を変えていない。
NHKから映像を提供したか否か
韓国は、この「緑なき島」の映像から、「強制連行されたうえ劣悪な環境で働かされ、多くの人が命を落とした」とプロパガンダをしている。2017年に制作された韓国映画『軍艦島』でもそうであったし、NHK「緑なき島」の映像そのものを使用したプロパガンダを、韓国の「日帝強制動員歴史館」、放送局KBSとMBCが行っている。
これらにNHKから映像を提供したか否かについて、昨年3月の参院内閣委員会で私は質問したが、NHKは「確認中」との答弁であった。昨年5月の参院内閣委員会で再質問したところ、NHKからKBSには平成22(2010)年に映像提供しており、「日帝強制動員歴史館」とMBCには提供したことはないというものであった。
NHKは「緑なき島」は、「当時の長崎県の端島で生き生きと暮らす人々の様子を取り上げたもの」としており、私からは、本来の趣旨に反する使用形態をされており、使用の撤回を求め、抗議しないのかを質問したが、NHKは「今後のことについては様々な観点から検討してまいりたい」との答弁であった。
私の質問から2週間ほどしてNHKは衆院総務委員会で、「緑なき島」の著作権は韓国において既に切れており法的な手段を取るのは難しいと答弁して以降、1年半近く何の説明もなかった。そのため、今回NHKに問いただしたのである。