中国「政権転覆」の鍵はイランにあり
中国共産党大会が開幕した。習近平総書記が3期目の任期へ突入するための大会となる。大会最終日の22日には、習氏の権威を一段と高める形で、党の最高規則である「党規約」の改正が行われる見込みである。そして翌日に、中央委員会第1回総会(1中総会)が開かれ、習氏の総書記3期目が決定する予定だ。
習近平体制はより盤石となっているが、国民の中には、体制への不満が潜在的にある。今月13日には、共産党大会を控え厳戒下であった北京の道路高架橋に、習氏を批判する横断幕が掲げられた。
その内容は、「PCR検査は不要、飯が必要」「ロックダウンは不要、自由が必要」「嘘は不要、尊厳が必要」「文革(文化大革命)は不要、改革が必要」「領袖は不要、投票用紙が必要」「奴隷でなく市民になりたい」というもので、もう1枚の横断幕には「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」と書かれていた。この横断幕は公安当局によってすぐ撤去され、ネットでの検索に制限が入るなど事実は隠された。
中国では、公安当局の力によりこうした不満は封殺されており、すぐには噴き出す状況にない。しかし、盤石の体制と見られている中国やロシアにおいて、体制を覆す動きが発生する可能性として注目すべき国がある。それはイランである。
イランでは9月、髪の毛を隠す布・ヒジャブの着用方法が不適切だとして22歳の女性が道徳警察に拘束され死亡した事件をきっかけに、抗議デモが起きた。このデモは女性をはじめ一般国民に広がり、さらにデモに参加した16歳の少女が不審死する事件が発生するなどして抗議運動は全土に広がり、反体制運動の様相となっている。
警察はデモに参加する国民に発砲を続けており、200人超が死亡したとされる。国民は警察に憎悪を抱いており、さらに抗議活動が激化すればイラン革命以来の体制が覆る可能性がある。イランの体制が崩壊すれば、戦争への抗議活動が起きているロシアに波及することが考えられる。
そして、中国国民も「絶対に体制を覆すことは不可能」との思考を変えるかもしれない。まさにイランの状況はロシアや中国にとっては厄介なのである。
2027年までに武力で台湾統一か
こうした中、中国では共産党大会において習近平氏へさらなる権力集中と権威付けを目指すわけだが、「党規約」の指導思想において「習近平思想」との言葉が盛り込まれるかに注目しなくてはならない。個人名の後に「思想」がついているのは毛沢東だけであり、もし今回、「習近平思想」が盛り込まれれば、習氏の権威は毛沢東に並ぶこととなる。
さらに、「党主席」のポストを復活させるかどうか。
「党主席」は毛沢東が務めていたポストで、1982年に廃止され、その後は「総書記」をトップとする集団指導体制をとってきた。党主席制度が復活し、こちらでも習氏が毛沢東に並び、現在までの集団指導体制を変えるのか、注視が必要である。
そして、習氏は自らの総書記3期目突入の正当性と、国民の目を外に向けさせるため、党大会初日の演説で台湾について、「将来の平和統一を勝ち取る方針を堅持するが、決して武力行使を放棄することはしない。必要な全ての対応を取る選択肢を留保する」「祖国の完全統一は必ず実現しなければならない」と述べた。
習氏は2018年の憲法改正時に、任期を3期目以降も可能とするのは台湾を統一するためだとしてきた。3期目突入にあたり、改めてその意志を示したことになる。
さらに演説では、「建軍100年奮闘目標を期限通りに達成する」と述べた。「建軍100年」は2027年にあたる。2027年は5年後であり、習氏の総書記としての3期目の任期が終わる年である。すなわち、この年までに習氏は台湾を統一しようとしており、平和的な統一は不可能であるから武力による行動を起こすのである。
中国はその準備を着実に進めており、習氏は演説で「訓練・戦備を全面的に強化し、軍事戦略指導を革新し、踏み込んだ実戦化訓練を進める」と述べた。この文脈では台湾を名指しはしていないものの、「実戦化訓練を進める」ための対象は、台湾であることは明らかである。