習近平総書記「異例3期目」へ 「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」の横断幕も|和田政宗

習近平総書記「異例3期目」へ 「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」の横断幕も|和田政宗

中国共産党大会が開幕した。習近平体制はより盤石となっているが、国民の中には、体制への不満が潜在的にある――。3期目の5年間で、中国はどこへ向かうのか、政権転覆の可能性はあるのか、武力による台湾統一はあるのか、和田政宗議員が徹底分析!


中国「政権転覆」の鍵はイランにあり

中国共産党大会が開幕した。習近平総書記が3期目の任期へ突入するための大会となる。大会最終日の22日には、習氏の権威を一段と高める形で、党の最高規則である「党規約」の改正が行われる見込みである。そして翌日に、中央委員会第1回総会(1中総会)が開かれ、習氏の総書記3期目が決定する予定だ。

習近平体制はより盤石となっているが、国民の中には、体制への不満が潜在的にある。今月13日には、共産党大会を控え厳戒下であった北京の道路高架橋に、習氏を批判する横断幕が掲げられた。

その内容は、「PCR検査は不要、飯が必要」「ロックダウンは不要、自由が必要」「嘘は不要、尊厳が必要」「文革(文化大革命)は不要、改革が必要」「領袖は不要、投票用紙が必要」「奴隷でなく市民になりたい」というもので、もう1枚の横断幕には「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」と書かれていた。この横断幕は公安当局によってすぐ撤去され、ネットでの検索に制限が入るなど事実は隠された。

中国では、公安当局の力によりこうした不満は封殺されており、すぐには噴き出す状況にない。しかし、盤石の体制と見られている中国やロシアにおいて、体制を覆す動きが発生する可能性として注目すべき国がある。それはイランである。

イランでは9月、髪の毛を隠す布・ヒジャブの着用方法が不適切だとして22歳の女性が道徳警察に拘束され死亡した事件をきっかけに、抗議デモが起きた。このデモは女性をはじめ一般国民に広がり、さらにデモに参加した16歳の少女が不審死する事件が発生するなどして抗議運動は全土に広がり、反体制運動の様相となっている。

警察はデモに参加する国民に発砲を続けており、200人超が死亡したとされる。国民は警察に憎悪を抱いており、さらに抗議活動が激化すればイラン革命以来の体制が覆る可能性がある。イランの体制が崩壊すれば、戦争への抗議活動が起きているロシアに波及することが考えられる。

そして、中国国民も「絶対に体制を覆すことは不可能」との思考を変えるかもしれない。まさにイランの状況はロシアや中国にとっては厄介なのである。

2027年までに武力で台湾統一か

Getty logo

こうした中、中国では共産党大会において習近平氏へさらなる権力集中と権威付けを目指すわけだが、「党規約」の指導思想において「習近平思想」との言葉が盛り込まれるかに注目しなくてはならない。個人名の後に「思想」がついているのは毛沢東だけであり、もし今回、「習近平思想」が盛り込まれれば、習氏の権威は毛沢東に並ぶこととなる。

さらに、「党主席」のポストを復活させるかどうか。

「党主席」は毛沢東が務めていたポストで、1982年に廃止され、その後は「総書記」をトップとする集団指導体制をとってきた。党主席制度が復活し、こちらでも習氏が毛沢東に並び、現在までの集団指導体制を変えるのか、注視が必要である。

そして、習氏は自らの総書記3期目突入の正当性と、国民の目を外に向けさせるため、党大会初日の演説で台湾について、「将来の平和統一を勝ち取る方針を堅持するが、決して武力行使を放棄することはしない。必要な全ての対応を取る選択肢を留保する」「祖国の完全統一は必ず実現しなければならない」と述べた。

習氏は2018年の憲法改正時に、任期を3期目以降も可能とするのは台湾を統一するためだとしてきた。3期目突入にあたり、改めてその意志を示したことになる。

さらに演説では、「建軍100年奮闘目標を期限通りに達成する」と述べた。「建軍100年」は2027年にあたる。2027年は5年後であり、習氏の総書記としての3期目の任期が終わる年である。すなわち、この年までに習氏は台湾を統一しようとしており、平和的な統一は不可能であるから武力による行動を起こすのである。

中国はその準備を着実に進めており、習氏は演説で「訓練・戦備を全面的に強化し、軍事戦略指導を革新し、踏み込んだ実戦化訓練を進める」と述べた。この文脈では台湾を名指しはしていないものの、「実戦化訓練を進める」ための対象は、台湾であることは明らかである。

関連する投稿


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


いきなり示された自民党改革案 このままでは承服できない!|和田政宗

いきなり示された自民党改革案 このままでは承服できない!|和田政宗

3月6日、党改革案がいきなり示された――。自民党はすでに国民の信頼を失っており、党運動方針案に示したように「解体的出直し」をしなければ生き残れない。


災害から命を守るために憲法改正が必要だ|和田政宗

災害から命を守るために憲法改正が必要だ|和田政宗

私は、東日本大震災の津波で救えなかった命への後悔から、その後、大学院で津波避難についての修士論文をまとめた。国会議員に立候補したのも震災復興を成し遂げるという意志からであった。だが、災害などの緊急時に対応できる憲法に現行憲法はなっていない――。


速やかなる憲法改正が必要だ!|和田政宗

速やかなる憲法改正が必要だ!|和田政宗

戦後の日本は現行憲法のおかしな部分を修正せず、憲法解釈を積み重ねて合憲化していくという手法を使ってきた。しかし、これも限界に来ている――。憲法の不備を整え、わが国と国民を憲法によって守らなくてはならない。(サムネイルは首相官邸HPより)


トランスジェンダー予備自衛官の本音|小笠原理恵

トランスジェンダー予備自衛官の本音|小笠原理恵

バイデン大統領は2021年1月25日、トランスジェンダーの米軍入隊を原則禁止したトランプ前大統領の方針を撤廃する大統領令に署名した。米軍では大統領が変わるごとにLGBTの扱いが激変――。だが、自衛隊ではお互いに理解を深めつつ共存している。その一例をご紹介しよう。


最新の投稿


マスコミが報じない川勝知事が暴言失言を恐れない理由|小林一哉

マスコミが報じない川勝知事が暴言失言を恐れない理由|小林一哉

「磐田は浜松より文化が高かった」 また暴言をした川勝知事。しかし、撤回もせず、悪びれる様子もない。なぜ、川勝知事は強気でいられるのか――。


【今週のサンモニ】怒りを煽りながら禅問答を繰り返す|藤原かずえ

【今週のサンモニ】怒りを煽りながら禅問答を繰り返す|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


【読書亡羊】原爆スパイの評伝を今読むべき3つの理由  アン・ハーゲドン『スリーパー・エージェント――潜伏工作員』(作品社)

【読書亡羊】原爆スパイの評伝を今読むべき3つの理由  アン・ハーゲドン『スリーパー・エージェント――潜伏工作員』(作品社)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】思考停止に繰り返される「多様性・反戦アピール」|藤原かずえ

【今週のサンモニ】思考停止に繰り返される「多様性・反戦アピール」|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。