豊かで平和な日本を守り抜く
安倍晋三元総理がお亡くなりになり2週間が経つが、喪失感に堪えない。毎日、就寝時や起床時に、安倍元総理やご家族のことを考える。それだけ私にとって大きな存在だったし、皆様にとっても大きな存在だったと思う。
安倍元総理に近かった方々と会話すると、どれだけ安倍元総理が私のことを気にかけてくださっていたかのお話を聞き、生前にご恩を返せなかったことの悔いと、これから、安倍元総理が成し得ようとして成し得なかったことを確実に実現しなくてはならないとの思いを強くしている。
安倍総理が目指した国家像を考えた時、憲法改正をはじめとした戦後レジームから脱却が最大の目標であったわけだが、安倍総理がまず目指したのは「豊かで平和な日本」を取り戻すことであったと考える。
私は平成29(2017)年の衆院選で、安倍総理総裁出演の自民党CMのコメントを全て書いたが、CM冒頭で「豊かで平和な日本を守り抜く」と、安倍総理に言ってただいた。我が国をしっかりとした国とするためには、日本経済を再び豊かにしなくてはならないとの意志が安倍総理にあったからだ。それは、アベノミクスの提唱、そして成功と、安倍総理の大きな功績となった。
アベノミクスの中で、安倍総理がまず目指したのは雇用の安定である。働きたい人が、働きたいと思っているのに職につけない。この状況を何としても改善し、働いて稼げる幸せを国民全体に感じてもらいたい。
民主党政権時代は0.8倍だった有効求人倍率は、第2次安倍政権以降急速に改善し、平成28(2016)年には史上初めて全都道府県で有効求人倍率1倍超を達成した。就職を望む方は正社員か非正社員かを問わなければ、誰でも就職できる水準となった。
そして平成29(2017)年には、全国の正社員有効求人倍率が1倍を史上初めて超えた。すなわち、給与の多寡を問わなければ、誰でも正社員になれるという水準となったのである。さらに平成30(2018)年には、有効求人倍率1.61倍と、昭和40年代(1970年代)の高度成長期と同水準の有効求人倍率となった。
我が国の経済を低落傾向から転換!
雇用状況の改善と経済成長が再び始まったことにより、株価は民主党政権時代の平成24(2012)年11月の8千円台から、安倍総理が退陣する令和2(2020)年8月には2万2千円台と大きく回復した。さらに円高も是正され、民主党政権時代の1ドル80円台から100円~120円台のレンジ内の適正水準となった。
このように安倍総理は我が国の経済を低落傾向から転換させる大きな実績を上げた。その上で、まだ実現途上だったものがある。それは、所得の十分な向上であった。アベノミクスが始まり、民主党政権時代にどん底となったサラリーマンの年間平均年収408万円は、安倍政権で440万円近くまで改善された。
しかし、ピークであった平成9年(1997年)の467万円には戻っていない。20年前の水準に戻っていない主要国は日本とイタリアだけである。安倍総理はさらなる所得向上を実現しようとしたが、体調の問題から退陣され、後を菅義偉総理に託された。
アメリカやイギリスは、リーマンショック等の危機の際に積極的な財政出動で経済を支えたことで、20年前に比べ年収は1.5倍以上となっている。安倍総理は退陣以後、私も参加する自民党内の中堅若手からなる積極財政を推進する議員連盟をサポートしてくださったが、さらに積極的に財政出動を行うことで、所得の向上をより強固なものとしようと考えたのだと思う。
そして、安倍総理が日本の将来のために目指したことは、日本経済が強く、永続的に発展することであった。経済に弾力性を持たせるため、規制改革を強力に推進し、国家戦略特区を活用した。岩盤規制の打破と継続的な改革政策の打ち出しは、株価の上昇にもつながった。
さらに、TPP11を取りまとめたことも大きい。アメリカが離脱する中、日本は取りまとめの中核となり、他国に比べてTPP11発効当初の関税撤廃率も低く抑えることができた。日本の国益を守る中、世界の自由貿易の唯一無二のリーダー国となった。
TPP11に加え、その後発効した日EU・EPA(経済連携協定)、日米貿易協定を合わせれば、世界経済の6割を占める自由で公正なルールに基づくマーケットを日本が中心となり誕生させたのである。