【橋下徹研究⑧】咲洲メガソーラー入札の重大疑惑―「副市長案件」の闇を暴く!|山口敬之【WEB連載第8回】

【橋下徹研究⑧】咲洲メガソーラー入札の重大疑惑―「副市長案件」の闇を暴く!|山口敬之【WEB連載第8回】

私はこれまで「橋下徹・上海電力疑惑」について、大阪維新の会や日本維新の会などを一緒くたに攻撃することは極力避けてきた。しかし、松井一郎大阪市長が今回のように「副市長案件であの制度を決めた」といい加減な発言をするのであれば、橋下氏や松井市長本人のみならず、大阪維新の会や日本維新の会の所属議員も大火傷を負うことになると警告しておく。


そして、上海電力日本の開業は2014年1月11日だから、2012年末の入札時には影も形もなかったことになる。そして開業わずか2か月で、咲洲メガソーラーの着工式に突然やってきたのだ。

この段階で上海電力は咲洲メガソーラーの企業連合体にも、合同会社にも参加していなかった。大阪市はなぜ完全な「無契約」「無関係」な上海電力日本を、着工式から排除しなかったのか。この点については次回以降の本欄で詳述する。

これこそが「副市長疑惑」の核心

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中央省庁や地方自治体の別なく、どこの役所でも最初に尊重されるのが「前例主義」だ。大阪湾の埠頭でメガソーラー事業をやろうとするのであれば、先行する夢洲と同じ部局が同じスタイルで進めるのが通例だ。「環境局」から「港湾局」へ、「メガソーラー総合パッケージ契約」から「不動産賃貸契約」へ。契約の内容をわざわざ大きく変えたのは、一体誰なのだろうか。

夢洲の企画立案が行われた2010年と、咲洲の企画立案が行われた2011年の間で、大阪市で何が起きたのか。もちろん、大阪市の幹部は地方公務員だから、ほぼ全員が続投している。

しかし一人だけ代わった幹部がいる。そう、2011年12月19日に平松邦夫氏から市長職を引き継いだ橋下徹氏だ。新市長からの強い指示がなければ、咲洲でも夢洲の前例を踏襲していたに違いない。

もう一度、咲洲メガソーラーの異常性を整理しよう。

(1)橋下市長誕生後、1年未満で入札(前代未聞のスピード)
(2)なぜ不動産賃借契約だったのか
(3)なぜ公募期間が18日しかなかったのか
(4)太陽光発電ビジネスの実績ゼロの企業グループだけが応札
(5)資格要件を満たさない2社の応札をなぜ認めたのか
(6)なぜ契約不履行を見逃したのか

そして、松井市長の「副市長案件」発言という意味で注目すべきなのが(1)だ。市長が代わると、政治任用の副市長も代わる。橋下氏が市長になって新たに副市長になった人物は3人。

◯村上龍一(2012年2月1日〜2016年1月15日)
◯田中清剛(2012年2月1日〜2019年5月31日)
◯京極務 (2012年11月7日〜2016年1月15日)

京極氏は就任が2012年11月7日で咲洲メガソーラーの公募最終段階に入ってからの就任だから、松井市長が言うところの「副市長」である可能性は極めて低い。

ということは、咲洲メガソーラーの異常な入札に関与した可能性のある副市長は「村上龍一」と「田中清剛」の2名に絞られた。

そして私が注目しているのは村上龍一氏のほうだ。なぜなら、2014年2月に橋下徹氏が仕掛けた「出直し市長選」で、橋下氏が2月26日に市長を失職して3月24日に再選されるまで「市長代行」を務めたのが村上氏だからだ。

そして、わずか28日間の「村上市長代行時代」に行われたのが、3月16日の「咲洲メガソーラー着工式」なのだ。これこそが副市長疑惑の核心である。そして内容を精査すれば、実はこれは「副市長疑惑」ではなく、「橋下徹疑惑」そのものであることがはっきりするのである。

これについては、次回の「橋下徹研究⑨」に譲ることにする。

(つづく)

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