だが、クレブス局長は選挙後、「今回の選挙は史上最も安全な選挙だった」と発言し、トランプの逆鱗に触れ、事実上の更迭の憂き目に遭った。
こうしたトランプの振る舞いが〈「史上最も安全な選挙だった」という本来なら誇るべき事実を覆い隠し〉てしまった、と山田氏は厳しく指摘する。
山田氏はトランプ政権が行った「対中外交における強硬姿勢への転換」を評価している。むしろ、だからこそトランプが選挙不正を煽り、議会襲撃を誘発したことで〈トランプの正当性を完全に貶め〉たと嘆くのだ。
「選挙不正」騒ぎで誰が喜ぶか
日本でも以前から、「選挙不正」を指摘するネット記事やSNSの書き込みが散見されてきた。集計機に対する批判や、「開票時の映像を見ると、同じ筆跡の投票用紙が続いている」とか「消しゴムで消したような跡がある」などとする怪しげな画像も飛び交う。
もちろん日本でもアメリカでも、言論の自由のある国では「選挙不正」を指摘する自由もなくはない。だが、そうした行為が「選挙というシステムや民主主義を敵視する勢力」を喜ばせることは知っておかなければならない。
そのうえで、さらにサイバーセキュリティに力を入れるべきだろう。米当局者は日本のサイバーセキュリティレベルは「マイナーリーグ」だと、指摘しているという(「『日本はマイナーリーグレベル』遅れに遅れているサイバーインテリジェンス体制」https://sakisiru.jp/26731)。
日本でも海外在住者を中心に電子投票を求める声は根強い。だが「実は紙で残しておくことが最も選挙干渉を受けない」というのが実態だ。少なくともサイバー攻撃を防ぐだけの体制が整わなければ移行は難しいだろう。選挙システムに対する信頼が低下すれば、日本でも「選挙不正デマ」がアメリカ並みの社会不安を引き起こしかねないのだ。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。