ロシアによる「虐殺」の歴史と行動の遅い日本政府|和田政宗

ロシアによる「虐殺」の歴史と行動の遅い日本政府|和田政宗

昭和20年8月8日、ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄し、満州や日本領土への侵略を始めた。8月14日には満州・葛根廟において、避難中の女性、子供ら千数百人が、白旗を掲げたにもかかわらず、ソ連軍によって機関銃で攻撃され、戦車でひき殺された――。日本はウクライナの苦しみが分かる国であるのに、なぜ率先して行動しないのか。


戦争犯罪で裁かれていないロシア

4月8日、政府はロシアの外交官追放をようやく決断した。私は速やかなる外交官追放を働きかけてきたが、政府の決断は欧米諸国から遅れを取った。日本は欧米諸国にただ追随するのではなく、リーダーシップを取りロシアの侵略を止めさせるべきである。

日本はロシアと国境を接しており、ウクライナへの侵略は決して対岸の火事ではない。しかも日本はウクライナと同様に領土をロシアに不法占拠されており、過去に多くの国民を虐殺された。だからこそ率先して声を上げなくてはならないのである。

ウクライナ・キーウ州からのロシア軍撤退によって、民間人を意図的に攻撃し殺害した虐殺が明らかになった。無抵抗の民間人に発砲し、拷問し殺害、婦女子への暴行が行われた。とんでもない戦争犯罪であり、ロシアは過去旧ソ連時代、満州や南樺太、千島列島においても同様の残虐行為を行った。

昭和20年8月8日、ソ連は日ソ中立条約を一方的に破棄し、満州や日本領土への侵略を始めた。8月14日には満州・葛根廟において、避難中の女性、子供ら千数百人が、白旗を掲げたにもかかわらず、ソ連軍によって機関銃で攻撃され、戦車でひき殺された。

死者は1000人以上、200人は小学生だった。さらに、敦化での婦女子への暴行、終戦後の樺太からの引揚船3船が攻撃を受け1700人が犠牲となった三船殉難事件など、ソ連による残虐行為は数を上げればきりがない。にもかかわらず、戦争犯罪で裁かれていない。

日本はウクライナの苦しみが分かる国であるのに、なぜ率先して行動しないのか。一方的に東京裁判で裁かれ、戦勝国による戦後秩序が崩壊したいまこそ、世界の平和のために行動すべきである。

日本政府は何をしているのか

4月8日にはEUのフォンデアライエン委員長がキーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談した。フォンデアライエン委員長はウクライナのEU加盟の手続きを加速すると表明。さらに、翌9日には英国のジョンソン首相がキーウを電撃訪問。ウクライナに対するさらなる財政支援、軍事支援を表明した。

日本政府は何をしているのか。ロシアの侵略をやめさせるため、ウクライナを守るため、平和を守るための行動が遅いと言われても仕方がない。これまでの動きは、欧米各国が制裁措置などを発表した後に日本が追随する形である。これでは、欧米諸国にもロシアにも相手にされなくなる。

なぜ、ロシアからの原油や天然ガスの禁輸を発表できないのか。米国としっかり連携を取りながら、日本が米国やNATO諸国の制裁より強い措置を次々に発表し、アジア・アフリカ諸国など国際社会を日本がけん引しまとめるべきである。安倍政権以降高まった日本の外交力に期待している諸国は極めて多い。

そうしたなか、日本とフィリピンによる初の外務大臣、防衛大臣協議、「2プラス2」が開かれたことは評価したい。日本がアジア太平洋の平和のために各国をけん引する動きである。しかし、これをロシアに対してなぜできないのか。繰り返しになるが、ウクライナで起きていることは日本に対し過去に起きたことであり、決して対岸の火事ではない。

北方領土でのロシア軍の演習が断続的に行われており、「極東の兵力は手薄だからまさか攻めては来ない」との論は通じない。その「まさか」をロシアはウクライナで行っているからである。

ロシアはこのままではレームダック化し、中国からも見放される可能性がある。窮地に陥ったロシアが何をするか。それはロシアの力を誇示するための核兵器の使用だ。「まさか」が起きかねない状況である。

すでにロシアは核兵器の使用もあり得ると威嚇しているが、こうした威嚇には屈してはならない。ロシアに付け入る隙を与えることになる。受け身になれば相手の思うつぼであり、さらなる制裁強化など脅しに屈しない強い姿勢こそが核兵器使用の危機を阻止することになる。

関連する投稿


追い込まれた岸田政権、いまこそ大胆な政策を!|和田政宗

追い込まれた岸田政権、いまこそ大胆な政策を!|和田政宗

第2次岸田再改造内閣が昨日発足した。党役員人事と併せ、政権の骨格は維持。11人が初入閣し、女性閣僚は5人と過去最多タイとなった。岸田政権の支持率向上を狙うが、早速、「この内閣は何をする内閣なのか?」という疑問の声が私のもとに寄せられている――。(サムネイルは首相官邸HPより)


私が見た「埼玉クルド問題」 不法滞在を目論むクルド人は速やかに帰国を!|和田政宗

私が見た「埼玉クルド問題」 不法滞在を目論むクルド人は速やかに帰国を!|和田政宗

マフィア化が始まっているとも言える「埼玉クルド問題」の本質とは何か。帰国したいのに帰国できない人物と、不法滞在を目論み「政治的迫害を受けた」と自ら主張し難民申請をする人たちは全く違う。しかし、この違いを混同させようとSNSで発信している人物がいる――。(サムネイルはYouTube「産経ニュース」より)


親日国パラオに伸びる中国の〝魔の手〟|和田政宗

親日国パラオに伸びる中国の〝魔の手〟|和田政宗

パラオは現在、中国による危機にさらされている。EEZ(排他的経済水域内)に海洋調査船などの中国公船が相次いで侵入しており、まさに日本の尖閣諸島周辺に近い状況となっている――。(サムネイルは筆者撮影)


NHKスペシャル『発見 昭和天皇 御進講メモ』は放送局として完全アウト|和田政宗

NHKスペシャル『発見 昭和天皇 御進講メモ』は放送局として完全アウト|和田政宗

今年も終戦の日前後のNHKスペシャルが相変わらずおかしかった。7日放送のNHKスペシャル『発見 昭和天皇 御進講メモ』を見たが、放送局として完全アウトともいうべき内容だった――。


「大東亜戦争」との呼称を禁止したGHQ 我々の世代で戦後史観からの脱却を!|和田政宗

「大東亜戦争」との呼称を禁止したGHQ 我々の世代で戦後史観からの脱却を!|和田政宗

まもなく8月15日の終戦の日を迎える。広島原爆の日、長崎原爆の日、東京大空襲をはじめとする各地の空襲により亡くなった方々への慰霊の日を経て、8月15日がやってくる。改めて感じることは、我々50歳前後を中心とする世代がしっかりと先の大戦の事実を伝えていかなくてはならないということであり、東京裁判史観、戦後史観からの脱却を果たさなくてはならないということである。


最新の投稿


副知事は退職金辞退なのに川勝知事は……自民県議団は5000万円返納を求めよ!|小林一哉

副知事は退職金辞退なのに川勝知事は……自民県議団は5000万円返納を求めよ!|小林一哉

不信任案決議にまでつながったボーナス未返納問題。しかし、まだ川勝知事には残されたカネの疑惑が……。


【反論】「インボイス反対派を完全論破する」を読んで|笹井恵里子

【反論】「インボイス反対派を完全論破する」を読んで|笹井恵里子

『Hanada』2023年9月号に「産業を破壊するインボイス制度」を寄稿したジャーナリストの笹井恵里子氏。それに対し、10月号ではデービッド・アトキンソン氏が「インボイス反対派を完全論破!」と題し反論をしましたが、今回はさらに笹井氏がアトキンソン氏に再反論!


「汚染魚食べろ」「人が住めない土地」「Fukushima Water」日本共産党の風評加害は組織的に行われていた|松崎いたる

「汚染魚食べろ」「人が住めない土地」「Fukushima Water」日本共産党の風評加害は組織的に行われていた|松崎いたる

日本共産党の度重なる風評加害の源泉は志位委員長による公式発言にあった!共産党が組織的に福島を貶め続ける理由は何か?『日本共産党 暗黒の百年史』の著者、松崎いたる氏による「ここが変だよ共産党」第8弾!


【今週のサンモニ】さすが「反日番組」!メディアの責任を日本国民にシレッと転嫁|藤原かずえ

【今週のサンモニ】さすが「反日番組」!メディアの責任を日本国民にシレッと転嫁|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。今週も自分たちについては無視してジャニーズ性加害問題を報じております。


追い込まれた岸田政権、いまこそ大胆な政策を!|和田政宗

追い込まれた岸田政権、いまこそ大胆な政策を!|和田政宗

第2次岸田再改造内閣が昨日発足した。党役員人事と併せ、政権の骨格は維持。11人が初入閣し、女性閣僚は5人と過去最多タイとなった。岸田政権の支持率向上を狙うが、早速、「この内閣は何をする内閣なのか?」という疑問の声が私のもとに寄せられている――。(サムネイルは首相官邸HPより)