取り立てて意外性もないし、政治的決断にも無関係だ。
何より、一方が「オフレコ破り」であるのに対し、一方は情報源を明かさないながら、関係者が見ればネタ元が分かってしまいそうなディープな情報を、公開前提で提供してくれる関係者が200人以上もいたという点に違いがある。
保身に満ちた議員たちの惨状
ただ、それも仕方がないのかもしれない。
『PERIL』では、トランプ大統領の精神状態が危ぶまれ、議会突入事件で文字通り議員と国民の生命が危険にさらされる中、米国の議員や軍人たちが何とか冷静であろうとし、「最悪の事態」を避けるべく奮闘していた様が詳述される。
一方、『孤独の宰相』に描かれているように自民党議員たちは、「菅総理では次の衆院選を戦えない」との情報が入るや否や、党内から「菅下ろし」を実行している。自らの議席の危機を前に、一年前に自らが選んだ総裁を引きずり下ろしたことになる。囲み会見で泣いて見せた閣僚もいるなど、ほとんどパニック状態だったようだ。
こうした自民党議員に取材を試みたところで、保身に満ちた言説しか出てこないに違いない。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。