「金融所得税制」の在り方
(撮影/今井一詞)
引き続き、増税の話です。
金融所得税制については、「逆進性」が大きい。不満は出ると思いますが、この時期には増税をさせていただきたい。
マイナンバーを活用して金融所得(配当所得と譲渡益)を名寄せして、50万円以上の金融所得の税率を現状の20%から30%に引き上げると、概ね3,000億円の税収増になります。2021年度(予算)の配当所得と譲渡益に係る財務省資料の数字を基に試算です。
「給付付き税額控除」の導入を
私は、「格差の是正」を目指す場合にも、「勤労インセンティブを促す」税制にすることが必要だと考えます。
低所得の方に対しては、勤労税額控除である「給付付き税額控除」を導入して支援したい。一定額を下回る所得層に対して還付金を給付するもので、税制を社会保障に活用するので、行政コストも安く済む。
「給付付き税額控除」が最初に議論されたのは麻生内閣の時でしたが、当時は正確な所得の把握が課題だった。2016年に導入されたマイナンバー制度により、正確な所得把握の条件は整っているし、銀行口座情報をマイナンバーに紐づけることによって迅速な給付が可能です。
日本経済が成長軌道に乗れば、将来的には、所得税課税最低限の引き下げとセットで所得税率を一律10%程度にすることで、所得税収総額は減らさずに、各人が努力しただけ報われる税制とすることが私の理想です。
「払う人」と「貰う人」の2分化が進み過ぎると、リスクをとって努力する人が日本に残らなくなってしまう。しかし、コロナ禍の現状では、前記の方法で財源を確保して、「分厚い中間層」を再構築するための格差是正策を断行する必要がある。