4月27日、菅内閣が慰安婦問題と朝鮮人戦時労働者問題で重要な閣議決定を行った。「従軍慰安婦」という用語はたとえ「いわゆる」が付いても不適切であり、また朝鮮人戦時労働者について「強制連行」や「強制労働」という用語も不適切だと決定したのだ。
「いわゆる」も排除
昨年、文部科学省の検定に合格した山川出版の中学歴史教科書に「いわゆる従軍慰安婦」という表現が使われた。安倍晋三政権下で、教科書検定基準に閣議決定などの政府見解を用いることが決められ、それによって領土問題などで我が国の立場がきちんと書かれるようになった。ところが慰安婦に関しては、平成5年の河野洋平官房長官談話で「いわゆる従軍慰安婦問題」という言い方が出てくることが悪用され、その表現が検定を通ってしまった。
「従軍慰安婦」という用語は当時使われておらず、戦後に造語されたものだ。強制連行をイメージさせるので、最近は学術用語や政府文書では使われていない。次の検定でこの語の使用をやめさせるには、閣議決定が有効と考えられていた。
維新の会の馬場伸幸衆院議員は4月16日に提出した質問主意書で、政府として「従軍慰安婦」「いわゆる従軍慰安婦」そして「慰安婦として従軍させられた」など「従軍」と「慰安婦」を組み合わせて使うことは不適切ではないか、と問うた。それに対して27日、菅内閣は「政府としては、『従軍慰安婦』という用語を用いることは誤解を招くおそれがあることから、『従軍慰安婦』又は『いわゆる従軍慰安婦』ではなく、単に『慰安婦』という用語を用いることが適切である(略)『従軍』と『慰安婦』の用語を組み合わせて用いるなど、同様の誤解を招きうる表現についても使用しない」という明確な答弁を閣議決定した。
戦時労働者「強制連行」も不適切
また馬場議員は朝鮮人戦時労働者に「強制連行」「強制労働」という用語を使うことは不適切ではないかという、質問主意書も同時に出していた。これに対して政府はやはり27日に「朝鮮半島から内地に移入した人々の経緯は様々であり、これらの人々について、『強制連行された』若しくは『強制的に連行された』と一括りに表現することは、適切でない」「国民徴用令により徴用された朝鮮半島の労働者の移入については(略)『強制連行』又は『連行』ではなく『徴用』を用いることが適切である」「『募集』、『官斡旋』及び『徴用』による労務については、いずれも強制労働に関する条約上の『強制労働』には該当していないものと考えており、これらを『強制労働』と表現することは、適切ではない」という答弁を閣議決定した。
今回の二つの閣議決定により、今後教科書から「従軍慰安婦」「強制連行」「強制労働」という反日的な用語が追放されるはずだ。菅義偉政権の毅然とした姿勢を高く評価したい。(2021.04.27国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)