4月7日、韓国でソウル市長と釜山市長の補欠選挙があった。セクハラが問題になり、釜山市長は辞任、ソウル市長は自殺したことを受けて、残余の任期1年を勤める新市長を選ぶ選挙だった。
ソウルでは第1野党「国民の力」の呉世勲候補(元ソウル市長)が得票率58%、与党「共に民主党」の朴映宣候補(前中小ベンチャー企業相)が39%だった。呉氏は市内25区すべてで朴氏を上回る圧勝だった。釜山市長選も、国民の力の朴亨埈候補が63%で、共に民主党の金栄春候補の34%を圧倒した。
若者が政権離れ
20代、30代の若者の文在寅政権離れが著しい。ソウルでは20代の55%、30代の57%が野党の呉候補を支持した。特に20代の男性の呉候補支持が73%と高く、伝統的な保守層である60代以上の男性の70%を上回った。わずか1年前の総選挙で、20代は56%、30代は61%が与党を支持していたから、すさまじい反転が起きた。
政権離れの理由は、就職難と不動産の高騰、そして政権関係者による不動産不正投機だ。「所得主導成長」を目指す経済政策で最低賃金が大きく引き上げられた結果、企業は正規社員だけでなく、アルバイトを含む非正規社員の採用も絞り、若者は深刻な就職難に苦しんでいる。その上、不動産価格が急騰し、ソウルのマンション価格は東京よりも高くなり、若者のマイホーム獲得は絶望的になった。さらに、文在寅大統領の娘を含む政府与党関係者がマンション転売などで多額の利益を得たことや、土地住宅公社職員多数が内部情報を使って土地投機をしていたことが発覚し、怒りが爆発した。
しかし、両市長選の野党勝利で韓国政治が正しい方向へ向かうとは思えない。文政権は「積弊清算」をスローガンに韓国の主流勢力を交代させることを図り、検察を使って法治主義を無視した前政権高官逮捕劇を演出した。国民の力の指導部や朝鮮日報に代表される保守言論界も、人民裁判のような朴槿恵、李明博の前元大統領と元高官らの逮捕・投獄を扇動した。それを主導したのが、文政権との対立で現在人気を集めている尹錫悦前検察総長だ。
韓国国民は生け贄(に)えを求め、政府高官逮捕で鬱憤(うっぷん)晴らしをしたいだけで、文政権が国是である反共・自由民主主義を壊していることへの危機感はまだない。