「全家腐」から見た中国的道徳心の異質性(下)|石平

「全家腐」から見た中国的道徳心の異質性(下)|石平

中国共産党幹部は大半が幹部本人だけでなく一家全員がグルとなって腐敗に励む(全家腐)。一体なぜなのか?それを理解する一つのカギが、中国古来の「宗族」という家族制度にある。「宗族中心主義」を知らずして中国はわからない。


中国古来の「宗族」という家族制度

Getty logo

本欄の前号は、中国における「全家腐」の実態を紹介した。

共産党幹部は大半が幹部本人だけでなく一家全員がグルとなって腐敗に励むため、「全家腐」は3文字熟語の一つとさえなっている。これは中国ならではの独特な現象であろうが、なぜ中国人は恥も外聞もなく、一家総出で腐敗の悪事を働くのか。それを理解する一つのカギが、中国古来の「宗族」という家族制度にある。  

近代以前の中国の地域社会、特に農村社会で大きな勢力をなして人々を束ねていたのが、「宗族」という組織である。たとえば、「石」という一族の場合、数百年前に先祖の一人が四川省の某地にやってきて子孫がその地で繁衍(はんえん)し、いつの間にか数百軒の「石家」ができていて、いくつかの村を形成した。そして、それらの「石家」はバラバラに存立するのではなく、共通の祖先をもつ一つの宗族を作って集団的な社会生活を営むのである。  

宗族には統治機構である「族会」があり、一族の有力者か長老が「族長」となって君臨する。宗族にはさらに「族規」と呼ばれる一族の法律、ルールがあり、族会や族長はこれに基づいて族人を統率し、宗族内の秩序を保っていく。宗族の集団生活の中心となるのは祖先を祀る「祠堂(しどう)」であって、祠堂は一族の集会所でもあり裁判所でもある。宗族はまた、共同財産である「族田」を持ち、そこから得た収入を財源に族人の子弟たちのための塾を開いたり、族人のなかの病弱者や孤児などを救済したりする。その一方、一族内の壮健な若者たちが「自衛団」のようなものを結成して外部勢力から宗族の安全を守る。

異常に肥大化した「宗族のエゴ」

関連する投稿


「パンダ」はいらない!|和田政宗

「パンダ」はいらない!|和田政宗

中国は科学的根拠に基づかず宮城県産水産物の輸入禁止を続け、尖閣への領海侵入を繰り返し、ブイをEEZ内に設置するなど、覇権的行動を続けている。そんななか、公明党の山口那津男代表が、中国にパンダの貸与を求めた――。(写真提供/時事)


中国で逮捕された邦人の救出に全力を尽くせ|矢板明夫

中国で逮捕された邦人の救出に全力を尽くせ|矢板明夫

数カ月もすると、拘束される人は精神状態がおかしくなり、外に出て太陽の光を浴びるため、すべてのでっち上げられた罪を自白する人もいる。中国当局のやり方が深刻な人権侵害であることは言うまでもない。


先端技術流出をスパイ防止法制定で防げ|奈良林直

先端技術流出をスパイ防止法制定で防げ|奈良林直

先端技術の研究室が中国人に占められている実例が東北大学にある。研究室のメンバー38人のうち16人が中国人で、42%を占める。とりわけ博士後期課程の研究員は、12人中10人が北京理工大学を含む中国政府認定の一流大学「国家重点大学」の出身者だ。このように、我が国の国立大学が中国の発展のために国費を投入している。


日米に対して、中国「ゼロ回答」の背景|和田政宗

日米に対して、中国「ゼロ回答」の背景|和田政宗

日中首脳会談が約1年ぶりに開催された。岸田総理は日本の排他的経済水域(EEZ)内に設置されたブイの即時撤去等を求めたが、中国は「ゼロ回答」であった。聞く耳を持たない中国とどう向き合っていけばいいのか。(サムネイルは首相官邸HPより)


ウイグルの自由と独立のためともに闘う!|和田政宗

ウイグルの自由と独立のためともに闘う!|和田政宗

中国政府は「ウイグル人はテロリストでテロ組織に属している」という主張を展開し、「ウイグル人は中国国内において弾圧されていない」という世論工作活動を世界各地で展開している――。(サムネイルは日本ウイグル協会Xより)


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発・反核原理主義を大爆発!|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発・反核原理主義を大爆発!|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。今週は原発や核兵器をめぐって、反原発・反核原理主義を大爆発させておりました。


日本防衛の要「宮古島駐屯地」の奇跡|小笠原理恵

日本防衛の要「宮古島駐屯地」の奇跡|小笠原理恵

「自衛官は泣いている」と題して、「官舎もボロボロ」(23年2月号)、「ざんねんな自衛隊〝めし〟事情」(23年3月号)、「戦闘服もボロボロ」(23年4月号)……など月刊『Hanada』に寄稿し話題を呼んだが、今回は、自衛隊の待遇改善のお手本となるケースをレポートする。


なべやかん遺産|エクシストコレクション

なべやかん遺産|エクシストコレクション

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「エクシストコレクション」!


川勝知事のヤバすぎる「不適切発言」が止まらない!|小林一哉

川勝知事のヤバすぎる「不適切発言」が止まらない!|小林一哉

議会にかけることもなく、「三島を拠点に東アジア文化都市の発展的継承センターのようなものを置きたい」と発言。まだ決まってもいない頭の中のアイデアを「詰めの段階」として、堂々と外部に話す川勝知事の「不適切発言」はこれだけではない!


【今週のサンモニ】田中優子氏「立ち止まれ」発言の無責任|藤原かずえ

【今週のサンモニ】田中優子氏「立ち止まれ」発言の無責任|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。外交交渉の具体的アイデアを全く示すことができないコメンテーターたち。