森元総理への異常なメディア・リンチ|花田紀凱

森元総理への異常なメディア・リンチ|花田紀凱

「男性は会議が長い」には寛容であり、「女性は会議が長い」にはなぜ不寛容なのか。そもそも森元総理の発言のどこが「女性差別」なのか。大新聞、テレビ、週刊誌、ネット、外国メディアまで揃いも揃って叩きまくる、異常なメディア・リンチに花田編集長が物申す!


左向け左のメディア狂乱

Getty logo

つくづく呆れた。

大げさに言えばメディアに絶望した。
「女性は会議が長い」発言での森喜朗元総理たたき。大新聞、テレビ、週刊誌、ネット、外国メディアまで揃いも揃って叩きまくる。まさにメディア・リンチとでも言うべき状態だ。

よく、ここまで、ひとりの人間を叩けるものだ。
何か大きな犯罪、破廉恥な事件を起こしたというなら、そんなこともあるかもしれない。しかし、たかが、「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」と発言しただけ。森元総理が持ち前のサービス精神で、話の途中、ちょっと“ジョーク”を飛ばしただけではないか。
 
まず、4日の朝日新聞、毎日新聞が1面トップで報じ、社説で森会長の辞任を求めた。森会長は発言を撤回し、謝罪したが、〈それで許されるはずがない。こんなゆがんだ考えを持つトップの下で開催される五輪とはいったい何なのか。(中略)巨費をかけて世界に恥をふりまくだけではないのか。〉(5日朝日)。〈女性全般を侮辱した〉とも書いているが、それほど大げさなことなのか。

2月8日までの間に朝日系(ネットなど含む)ではこの問題を80本以上、毎日系では150本以上も報じた。ワイドショーでは連日コメンテーターとやらが言いたい放題。2大週刊誌『週刊文春』『週刊新潮』もやれ「黒歴史」だなんだと森元総理の過去の話まで蒸し返す。
 
産経の週刊誌ウォッチングにも書いたが『新潮』くらいはこのメディア狂乱を批判してほしかった。

外国メディアという援軍

いちばん呆れたのは日刊スポーツで、連日、1ページ以上スペースを使って(日によっては1面で)、〈世界中が不快感 辞任否定〉(6日)、〈森会長続投の力学〉〈森発言やまぬ批判〉(7日)、〈国民6割不適任〉〈森さん辞めた方が皆納得〉(8日)。

9日には400メートル障害・銅メダルの為末大氏まで引っ張り出して、〈「私はいかなる性差別にも反対します。理事会での森会長の処遇の検討を求めます」〉。11日は1面で〈森孤立〉。
 
いい加減にしろよ、と言いたくなった。スポーツ紙はオープン戦でも報じてくれ。

ニューヨーク・タイムズなど外国メディアが参入してからは、問題はどんどんエスカレート。初めは「女性蔑視とも取れる」とカギカッコ付きで報じていた日本のメディアも、外国メディアという援軍を得て、「女性蔑視」「女性差別」を声高に言い出す。これってデジャブ?
 
まず、外国メディアに情報を流す。逆輸入する形で日本のメディアが報じる。そう「従軍慰安婦」「徴用工」と全く同じ構図なのだ。だいたい「女性差別」「女性蔑視」と言うが、朝日デジタルによると、新聞・放送38社の役員は全体で319人、女性はたったの10人。全体の3.13%しかいない。上場企業全体の5.2%より低い。
 
川淵会長後任の件についてもメディアのひどさを書きたいのだが紙幅が尽きた。森元総理発言に話を戻すと、実は森元総理、ご本人こそ話が長いことで有名なのだ(実に面白いから気にならないのだが)。問題になった発言が出た時の話も約40分。

「女性は話が長い」と森元総理が言った時に、出席者の誰かが、「でも、森さんの話も長いですね」と返していたら、会場、大爆笑。それで終わったのだ。
 
その程度の話だ。

関連する投稿


自衛隊員靖国参拝で防衛省内に共産党の内通者|松崎いたる

自衛隊員靖国参拝で防衛省内に共産党の内通者|松崎いたる

自衛隊員の靖国参拝の情報を赤旗と毎日新聞にリークした者を突き止めようとする防衛省と、防衛省内にいる内通者を守ろうとする共産党――事の本質は安全保障に直結する深刻な問題だった。


山口敬之さんの連載『安倍暗殺の謎 第7回』を3月号に掲載しなかった理由を説明します|花田紀凱

山口敬之さんの連載『安倍暗殺の謎 第7回』を3月号に掲載しなかった理由を説明します|花田紀凱

「連絡がないままボツにした」「いくらでも直しますから、ボツはやめてくれ」……。『安倍暗殺の謎 第7回』を3月号に掲載しなかった件について、山口敬之さんは自らの番組その他であれこれ発言していますが、事実と異なる点が多々あるので、以下、経過を説明します。


【編集長から】ジンジャー、つまり生姜の花|花田紀凱

【編集長から】ジンジャー、つまり生姜の花|花田紀凱

10月26日発売の12月号【編集長から】を特別無料公開!


【著者インタビュー】編集長も三度泣いた! 下山進『アルツハイマー征服』

【著者インタビュー】編集長も三度泣いた! 下山進『アルツハイマー征服』

治療法解明までの人類の長い道全世界で約5000万人の患者とその家族が苦しむ「アルツハイマー病」は、がんと並ぶ治療法が未解決の病。だが研究が進み、現在ついに希望の”光”が見えてきた――発症した患者、その家族、治療薬を開発する研究者たち……いくつものドラマが重なる治療法解明までの長い道のりを描いた、傑作サイエンス・ノンフィクション!


中国によって「自由」を奪われたモンゴルの惨状|山田宏×エンフバット・トゴチョグ

中国によって「自由」を奪われたモンゴルの惨状|山田宏×エンフバット・トゴチョグ

モンゴルで起きている現実は明日の日本でも起こる。中国による人権弾圧を20年以上にわたって訴え続けてきた南モンゴル人権情報センターの代表が7年ぶりに緊急来日。今モンゴルで何が起きているのか? 南モンゴルを支援する議員連盟幹事長の山田宏参議院議員と緊急対談を行った。


最新の投稿


【シリーズ国民健康保険料①】とにかく誰もが困っている「国民健康保険料」|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料①】とにかく誰もが困っている「国民健康保険料」|笹井恵里子

突然、月8万円に……払いたくても払えない健康保険料の実態の一部を、ジャーナリスト・笹井恵里子さんの新著『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より、三回に分けて紹介。


【シリーズ国民健康保険料②】あまりに重すぎる負担…容赦のない差し押さえも|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料②】あまりに重すぎる負担…容赦のない差し押さえも|笹井恵里子

税金の滞納が続いた場合、役所が徴収のために財産を差し押さえる場合がある。だが近年、悪質な差し押さえ行為が相次いでいるという(笹井恵里子『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より)。


【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

いまもっぱら話題の「103万円、106万円、130万円の壁」とは何か。そしてそれは国民健康保険料にどう影響するのか(笹井恵里子『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より)。


【今週のサンモニ】重篤な原子力アレルギー|藤原かずえ

【今週のサンモニ】重篤な原子力アレルギー|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】激震の朝鮮半島に学ぶ食と愛国心  キム・ミンジュ『北朝鮮に出勤します』(新泉者)、キム・ヤンヒ『北朝鮮の食卓』(原書房)

【読書亡羊】激震の朝鮮半島に学ぶ食と愛国心 キム・ミンジュ『北朝鮮に出勤します』(新泉者)、キム・ヤンヒ『北朝鮮の食卓』(原書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!