四海波高し。米中両大国の常軌を逸した振る舞いで幕を開けた今年、国際社会の直面する危機は尋常ではない。危機の本質は、世界が膨張する中国に飲み込まれることだ。
その中で日本がどのように自由陣営に貢献できるかを問うときだ。私たちはかつて列強の脅威に耐え抜いた。今回、中国共産党の脅威をかわし、世界に日本の道を示せるか。現在の危機は黒船来航から始まった160年余り前のそれよりも、はるかに深刻だ。理由の第一に国際情勢の相違がある。
深刻な国際社会の危機
19世紀後半、日本に襲いかかった列強はそれぞれ大きな国内問題を抱え、「日本侵略」に専念できなかった。米国は4年もの間、62万人の将兵が死亡した南北戦争を戦っていた。欧州勢も1853年から3年間、近代史上稀にみる大規模なクリミア戦争で英、仏、オスマン帝国等がロシアなどと対立し、双方合わせて75万人以上の戦死者と病死者を出した。列強の日本侵略に投入できる力は当然限られており、日本にとっては好運だった。
また、日本政府も国民も列強の襲来に国家存亡の危機を感じ取った。国民は明治天皇発布の五箇条の御誓文を心に刻み、政府は富国強兵政策を打ち出して、緊張感を持ち続けた。
現在はどうか。日本防衛の礎となってきた米国で政権引き継ぎに当たって前代未聞の混乱が生じた。次期バイデン政権はウイルス、人種差別と社会の分断、経済、地球温暖化への取り組みなど、政治的熱量の殆んどを消耗しそうな課題を抱えている。バイデン氏は「同盟国との協力関係を再び強化する」と約したが、大きな期待を抱けるだろうか。
他方、中国は国際社会の非難を気に留めず、香港民主派を一斉逮捕するなど、独裁専制の暴力的中華帝国路線を突き進んでいる。また、ポンペオ氏が昨年5月6日に指摘し、雑誌「正論」が2021年2月号で関連秘密資料をスクープしたように、中国政府は武漢ウイルスが人から人に感染する「重大伝染病」であることを知りながら、その事実を隠蔽し、世界に拡散した。にも拘わらず、王毅外相は「2020年は中国外交の道のりの中で新時代を切り開く、意義のある1年だった」と賛美した。