ところがここで最も重要な問題は、バイデン大統領がアメリカの反抗を続けるか否か、続けるとして、どのような形で反抗するのかという点だ。
もちろん民主党からは抵抗の続行へ強い支持があり、アメリカ国民も幅広く支持している。最大の違いは、同盟国をないがしろにした前任者と違って、バイデン大統領が同盟国を団結させるだろうという事だ。
しかし次期政権に対して中国との関係の「リセット」を求める圧力は、かなり大きなものになるだろう。よって日本や欧州諸国といったアメリカの同盟国たちは「バイデン政権と協力して中国の増大しつつある影響力に対抗することを望んでいる」という強力なサインを送るべきだ。
民主主義国家たちが、中国政府の取り込みや、脅迫、恫喝に団結して抵抗することになれば、習総書記は酷い頭痛の種を抱えることになる。同総書記はあまりに長期にわたって分断統治(ディバイドアンドルール)を実行できる立場にいた。そして従順な国には好都合な取り引きを提供し、それ以外の国を選んで懲罰を科してきたのだ。
2017年以来、オーストラリアは主権と民主主義を、中国共産党の干渉から守る対策をとってきた。中国政府がオーストラリアに対して科しているここ最近の懲罰の数々は、他国に強力なメッセージを送ることを目的としたものだ。
もし我々が世界を再形成しようとする中国共産党の目標の達成を阻止しようと考えるのであれば、自国は犠牲にならずに済んだと安堵の吐息をつくのではなく、オーストラリアと組んで脅迫に対抗するための同盟を形成すべきであろう。
共産党政権の中国との闘いは理念を巡る闘い
新型コロナウイルスの世界的な大流行は、戦略面で大きな不確実性を発生させた。たしかに中国政府は大流行の最初の数週間では深刻な後退を強いられたが、その後に何カ国かに対しては以前よりも大きな影響力を獲得することになった。
それは「マスク外交」を通じたものや、新型コロナに対する独裁的ではあるが明らかに効果的な対処と、それに比べてアメリカ政府が悲惨な対応しかできていないことを強調するものであった。ただし中国政府の新型コロナの隠蔽や、耳障りで多くの場合に刺激的な「戦狼外交」は、世界の中国への視線を一気に否定的なものにした。
次のフェーズは「ワクチン外交」に移るだろう。
西側諸国の研究所が最高のワクチンを開発し、そして人々に迅速に接種できるようにすれば、バイデン政権は欧州の同盟国と共に、民主主義に疑問を持っていた人々を再び魅了するという、この上ないチャンスを得ることになる。中国は政府による強烈な介入でパンデミックを抑え込むことができたのかもしれない。
しかし民主主義の西側諸国による技術上の優位性が、中国が世界に解き放った災厄を解決できるかもしれないのだ。こうしたチャンスを活かせるかどうか、西側の政府がどれだけ寛容に、又は利己的に、数に限りのあるワクチンを世界に供給できるのかにかかっている。
この状況は、私たちが本書で主張したことを強調している。それはつまり、共産党政権の中国との闘いは、何よりも理念を巡る闘いであるということだ。
世界は今、イデオロギー闘争に巻き込まれている。一方は強大な経済力を持つ一党独裁国家であり、もう一方は自らの自由を当然のものと見なしてきた民主主義国家の弱い同盟だ。
日本はアジア太平洋地区における最強の民主主義国だ。私たちは日本が同地区において最も活動的で強力な民主主義の守護者の役割を担うことを世界が求めていると考えている。
クライヴ・ハミルトン
マレイケ・オールバーグ
2020年12月