日本の大学は中国との関係において並外れて脳天気だ
大部分の日本人、特に政財界のエリートたちにとって、中国共産党の日本社会への浸透はあまり関心を引くものではないのかもしれない。おそらく日本の民主主義への脅威にほとんど関心を払われていないことは、それほど驚くべきことでないのかもしれない。
なぜなら中国共産党は、長年にわたって正にこうしたエリートを標的とした影響工作を仕掛けてきたからだ。こうした影響工作が白日の下にさらされ、公の場で議論の焦点になるまでは、ほとんど何も為されないだろう。
この責任は、自分たちも中国共産党による影響力活動の標的にされてきた、日本のメディアにある。では日本でも本書と同じような中国の影響工作活動の広まりを暴くような本が、適切な資質を備えた学者たちによって書かれることになるのであろうか?
私たちはそうなることを願っているが、同時に中国政府が日本の大学の中で影響力を広めていることも知っている。
つい最近のことだが、内閣官房長官の加藤勝信(かつのぶ)氏は、日本の大学が知的財産の窃取(せっしゅ)において重要な標的になっていると警告している。軍事関連技術は高い価値をもつ標的だが、日本では農家が開発した果物の交雑種すら中国の農業研究者に盗まれている。
こうした窃盗は、日中の大学間の数多くの協定や交流事業によっても促進されているのだ。
オーストラリアと同様に、日本の大学は中国との関係において並外れて脳天気だ。アメリカは中国による軍事関連技術の流出を厳しく取り締まっているため、日本やオーストラリアのような同盟国は、アメリカが軍事協力について厳格な統制を求めてくる可能性があると考えていたほうがよい。
孔子学院は、中国政府の統一戦線工作にとって重要な出先機関の一つである。同学院にはスパイ工作への関与の疑いもある。アメリカやカナダ、オーストラリア、欧州諸国は同学院を閉鎖しつつあるが、日本は依然として歓迎している。これは危険だ。
中国の国民――それがビジネスマン、学生、学者、芸術家かに関係なく――が海外に行くときは、中国共産党から要請されたら必ず協力することを求められており、今やそれが中国共産党の政策となっているのだ。こうした義務は、中国の法律にも記されている。
習近平総書記は、これまで何度も国民による統一戦線工作への関与を期待していると強調してきた。この工作とは、中国政府が望むような物の見方をとって、中国政府の利益となる行動をしてくれる、「友人」たちと手を結ぶことだ。
華僑という存在は、中国共産党にとって、どこに住んでいてどの国籍であろうとも、何にも勝る忠誠心を祖国に捧げるべき、中国の息子や娘たちであることになる。もちろん中には強烈な圧力を受ける者もいるし、党から距離を取りたいと考える者もいる。
ドナルド・トランプによる政治に反感を持ち、同氏の振る舞いに拒絶感をもつ多くの西側諸国の人々も、彼が中国の増大しつつある影響力――これは秘密裏の、強圧的かつ腐敗した手段によるものだ――に反抗した最初のアメリカ大統領である、という事実は歓迎している。